アメリカ合衆国において,有権者が政党の公職候補者や全国党大会に出席する代議員を直接選ぶ選挙のことをいう。19世紀の前半までは,政党の幹部会等によって公職候補者が決められていたが,有権者の意思が十分に反映されず,また党幹部の不正が行われたことから批判が生じ,新しい制度が導入された。1903年,ウィスコンシン州において直接投票によって党の公職候補者を選出する方法が州法で定められて以来,しだいに多くの州で立法化されていった。今日では,地方における党の公職候補者を決める方法として広く採用されている。
この方式を各州において,正・副大統領候補を指名する全国党大会に出席する代議員選出に応用したのが大統領予備選挙である。具体的なやり方は州法で定められており,各州によって異なるが,大別して二つの方法がある。一つは閉鎖型と呼ばれるもので,有権者はあらかじめ各自の支持する政党を登録しておき,その党の望ましい候補者に投票する。他の一つは開放型と呼ばれるもので,有権者は投票場に行ってから自分の支持する政党を選び,その中から望ましい候補者に投票する。なお,これとは別に党員集会(コーカス)を開いて代議員を選出する州もある。1984年の大統領選挙の場合,予備選挙を実施する州は民主党が24州,共和党が27州(ほかにそれぞれ首都ワシントン,プエルト・リコでも実施)を数え,残りの州では党員集会が開かれた。大統領予備選挙は一般の有権者が多数参加し,一度で代議員を決めてしまうことから,大統領候補に対する人気投票的色彩が強い。これに対して党員集会のほうは党の州・地方組織の幹部・活動家が中心であり,党指導者の影響を受けやすいといわれる。近年,大統領予備選挙で代議員を選出する州がしだいに増加する傾向にあったが,84年の場合,1968年以来増え続けてきた予備選挙がはじめて減少して注目された。
執筆者:藤本 一美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…直接立法制は代表民主制と対置されるものではあるが,代表民主制に代置しうるものではない。 なお,論者によっては,上記の直接民主政治と直接立法制に加えて,リコール(解職請求),プライマリー・エレクション(予備選挙)の両制度をも直接民主制の形態に含めて論じることがあるが,これは適切とは考えられない。確かに,リコール,プライマリー・エレクションは直接立法制と並行して発達したものであり,直接立法制を採用したところではリコール,プライマリー・エレクションをも採用していることが多い(この逆は真ではないが)。…
※「予備選挙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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