上眼瞼溝の存在により上眼瞼が二重に見えるものをいう。二重瞼〈にじゅうけん〉あるいは,二重眼瞼〈にじゅうがんけん〉ともいう。上下の眼瞼の内部には緻密な線維性結合組織でできた固くて弾力性のある瞼板(けんばん)があり,上眼瞼の瞼板には眼瞼挙筋が付着している。眼瞼挙筋は瞼板を被う皮膚にも付着しており,目を開くと,瞼板とともに付着部の皮膚が引き上げられることによって上眼瞼溝が出現する。一重瞼single eyelidでは,眼瞼挙筋の皮膚への付着がないため,目を開いても上眼瞼溝は生じない。上眼瞼溝の位置が上眼瞼の自由縁にごく近いと,外見上は一重瞼に見える。これを偽一重瞼あるいは仮性一重瞼という。いわゆる奥二重もこれに近い状態である場合が多いが,顔を動かさずに視線を落とすことにより,上眼瞼溝の存在を確認できる。ヨーロッパ人には二重瞼が多い。アジア人でもタイ人やマレー人には多く(85~95%),中国人や韓国・朝鮮人にはやや少ない。日本人では60~75%程度の出現率で,アイヌでは90%以上である。日本人では男性に少なく,女性に多い。男女ともに幼年期は少なく(23%),年齢とともに増加し,45歳以上では安定し,83%にも上昇する。遺伝様式は一重瞼が劣性,二重瞼が優性とされるが,皮下脂肪が厚いと二重瞼は発現しにくい。
執筆者:欠田 早苗+多賀谷 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
眼瞼(がんけん)(瞼(まぶた))の自由縁にほぼ平行して走る上眼瞼溝の存在により上眼瞼が二重にみえるものをいう。上眼瞼溝が眼瞼の自由縁にごく近く位置する場合には、開眼時に眼瞼縁が眼瞼とともに上方にあがり、前面の皮膚が被蓋(ひがい)ひだとなって垂れ下がり上眼瞼溝や眼瞼縁を覆い隠すため、外見上は上眼瞼溝のない一重(ひとえ)瞼のようにみえる。しかし、静かに閉眼すると被蓋ひだの後方から眼瞼縁が下りてきて二重瞼の状態を呈するので、一重瞼とは区別できる。これを仮性二重瞼ともいう。一般に、一重瞼と二重瞼には移行型がいろいろあり、統計的に両者を区別して表すのはかなり困難である。
なお、上眼瞼溝の位置と強弱には個人的および人種的な特異性が強くみられ、人類学では重要な研究対象となっている。二重瞼はヨーロッパ人やアイヌに多くみられ、日本人は比較的少ない。また、一重瞼を二重瞼にするのは容易であるが、逆に二重瞼を一重瞼にするのはむずかしい。
[大島 崇]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…上眼瞼溝の位置が下降して上眼瞼の前縁に一致すると,前方からは一重眼瞼に見えるが,これを偽一重瞼あるいは仮性一重瞼という。ヨーロッパ人には二重瞼が多い。モンゴロイド大人種でもタイ人やマレー人には多く(85~95%),中国人や朝鮮人にはやや少ない。…
…眼瞼(がんけん)ともいう。眼球の角膜を保護する一種のひだで,サメ類などの一部の魚類のほかは,両生類以上の脊椎動物に発達する。サメでは下のまぶたが可動性でこれで目を閉ざすが,カエルなどの両生類もこれに似ている。爬虫類では,多くは上と下のまぶたのどちらも可動性であるが,目を閉ざすのは普通下のまぶたである。爬虫類,鳥類,および哺乳類では,第3のまぶたである瞬膜が発達する。瞬膜は内側上方から外側下方へ動いて角膜を清掃し,湿りけを与える働きをする。…
※「二重瞼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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