翻訳|dominant
高等生物の体細胞は二倍体で1対の相同な染色体をもつので,その表現型は相同染色体上の対立遺伝子群の相互作用によって決定される。今ある一つの形質(例えば花の色)を支配する対立遺伝子についてヘテロ(異型)な個体において,対立遺伝子のうちの一方の遺伝子によって支配される形質だけが発現するとき,その形質および遺伝子は他方のそれに対して優性であるという。またこのとき優性形質によって覆いかくされて現れない形質および遺伝子を劣性という。これらの用語は1865年エンドウを用いて遺伝の法則を発見したG.J.メンデルによって最初に用いられた。例えば花の色を支配する対立遺伝子についてそれぞれホモ(同型)なエンドウの赤花と白花の純系を交雑すると,雑種第1代F1(対立遺伝子についてヘテロ)はすべて赤花になり,赤花が白花に対して優性であることがわかる。F1の自家受粉によってできた雑種第2代F2では,赤花と白花のものを生じるが,優性の赤花対劣性の白花は3:1の比率で生じる。このような場合は赤花は白花に対して完全優性といわれるが,形質によってはこのようにはならず,F1がしばしば両親の中間の形質を現すことがある。これを不完全優性という。例えばアンダルシアン種のニワトリで,黒色のものと白色のものを交雑すると,F1はすべて両親の中間の緑灰色の羽毛をもつものばかりを生じ,そのF2では黒色:緑灰色:白色=1:2:1の比で生じる。優劣性は遺伝子本来の性質ではなく,対立遺伝子の相互作用の結果を反映しているものである。その機構については十分よくわかっていないが,一般に対立遺伝子の一方が機能をもち他方がもたないために前者が優性となっている場合が多い。
→遺伝
執筆者:阪本 寧男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
遺伝学における「顕性」の以前の言い方。形質の出現頻度において優勢であるという意味であったが、形質の機能や能力などの面で優れているとの誤解を生むおそれがあり、2017年(平成29)ごろから「顕性」が使われるようになった。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…IAとIBの間には優劣がないため,ヘテロ接合体IAIBの血液型はA型とB型の両方の特徴をもち,AB型となる。このように対立遺伝子の働きに優劣がない場合を共優性codominantという。一方,IAやIBはiに対し優性dominantであり,逆にiはIAやIBに対し劣性recessiveであるので,二つのヘテロ接合体IAiとIBiの表現型はそれぞれA型とB型になる。…
…IAとIBの間には優劣がないため,ヘテロ接合体IAIBの血液型はA型とB型の両方の特徴をもち,AB型となる。このように対立遺伝子の働きに優劣がない場合を共優性codominantという。一方,IAやIBはiに対し優性dominantであり,逆にiはIAやIBに対し劣性recessiveであるので,二つのヘテロ接合体IAiとIBiの表現型はそれぞれA型とB型になる。…
※「優性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新