日本大百科全書(ニッポニカ) 「ズルチン」の意味・わかりやすい解説
ズルチン
ずるちん
dulcin
尿素の誘導体。スクロール、p(パラ)-エトキシフェニル尿素ともよばれる。1883年にドイツのベルリナーブラウが発見した化合物。p-フェネチジンにホスゲン、続いてアンモニアを作用させて合成する。無色の針状結晶。冷水にはわずかに溶けるが、熱水には溶けやすい。エタノール(エチルアルコール)にもかなり溶ける。
ズルチンは甘味が強く、ショ糖の200~300倍もの甘さがある。第二次世界大戦後の食糧難時代に人工甘味料として使われたことがあった。日本では食品添加物として1948年(昭和23)に許可されたが、発癌(がん)性などの毒性が強いことから、1967年には佃煮(つくだに)、漬物などの10品目に限り制限付きで使用が認められたものの、その後1969年には全面使用禁止になった。
[務台 潔・河野友美・山口米子]