人工生命(読み)ジンコウセイメイ(英語表記)artificial life

翻訳|artificial life

デジタル大辞泉 「人工生命」の意味・読み・例文・類語

じんこう‐せいめい【人工生命】

artificial lifeコンピューター上で、遺伝や進化の仕組みや生物の振る舞いをシミュレーションしたもの。人工知能の研究から派生した新しい研究分野である。

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精選版 日本国語大辞典 「人工生命」の意味・読み・例文・類語

じんこう‐せいめい【人工生命】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] artificial life の訳語人間が創造した生命の意 ) 生命体の持つ複雑な機能や活動をコンピュータ上にシステムとして再現すること。生命現象の本質を解明し、その原理を技術的に利用することを目的とする。AL。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「人工生命」の意味・わかりやすい解説

人工生命
じんこうせいめい
artificial life

地球上で進化した自然の生命系だけを考えるのではなく、それ以外の想定可能なさまざまな生命の形態を考案することを目的として、コンピュータのプログラムを通して創造した生命系を人工生命という。略してALまたはALIFE(エーライフ)という。人工生命も自然界の生命体と同様に、生誕増殖、死滅という生命活動のサイクルにしたがって変化していく。それはコンピュータの中で活動する人工的な生命形態ではあるが、自然の生命系に類似した自律的な生命活動を表現したものになっている。

 人工生命の研究は1980年代にラングトンChristopher G. Langtonらが中心となり行われた。人工生命では生物の個体に相当するものをエージェントとよんでいるが、そのエージェントの生き死にをゲーム化しコンピュータで解析する「生命ゲーム」の研究を起点としてスタートした。生命体のもっとも基本的な形態として考えられたのは、碁盤の目のようにくぎられた人工的なセル(細胞)が自律的に増殖するセルのオートマトン(自動機械)である。ラングトンはセル・オートマトンを基盤にして、菌類の増殖形態に類似したループ状に広がっていくセルのネットワークをコンピュータで表現し、これを人工生命とよんだ(1984)。自己増殖するコンピュータ・プログラムの例としてレイThomas S. Rayが考案したメモリー(記憶装置)の複製プログラム「ティエラ」も人工生命の一種である。このプログラムは遺伝子の塩基配列に似た構造で設定され、突然変異のようなエラーも発生するように仕組まれている。

 現在の人工生命の研究は、遺伝的な学習機能を備えた計算原理の開発と、人工生命体の器官形成に関する可能性の探究に向けられている。研究者はコンピュータを有力な手段にして、さまざまな環境を人工的に設定することにより、生物進化の可能性を広く探究しようとしている。日本では、人体に制限されない人工脳の研究もあり、人工生命の研究は生物学や医学による生体研究の制限を超えて有効性を発揮する可能性を秘めている。

[中村量空]

『スティーブン・レビー著、服部桂訳『人工生命――デジタル生物の創造者たち』(1996・朝日新聞社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人工生命」の意味・わかりやすい解説

人工生命
じんこうせいめい
artificial life; AL

コンピュータ・プログラムを使って生命・生態系を再現し,その発展や進化といった複雑な現象を実験・観察して生命への理解を深めようという試み。アメリカ合衆国のサンタフェ研究所のクリストファー・ラングトンによって提唱された。たとえば,相手に出会うと攻撃したり協力したりする能力や,自分を複製する能力など,生命の特徴を備えたプログラムをつくり,同時に多数実行するとお互い影響し合い,まったく別のプログラムが突然変異的に誕生するなど,自然界に共通する現象が観察できる。体系的な理論や研究方法は確立されていないが,従来の人工知能を補完する存在として環境の変化に対応できるロボットなどへの応用も提案されている。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「人工生命」の解説

人工生命

システムやソフトウェアを、生物の成長や進化の過程のように自律性を持たせて形成する技術のこと。まだ基礎研究を行う段階の分野である。生物が進化した過程のように、ソフトウェアどうしが影響し合いながら変化し、成長することを目指している。あるいは、個々の部分が影響し合いながら1つの組織を形成し、それらが寄り集まって1つのシステムが形成されることを目指している。これにあわせて、環境への適応能力を持ち、故障した部分があっても全体の機能が低下しないようなシステムの構築なども、視野に入れられている。

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