空気中の水蒸気が凝結して微水滴(雲粒)となるためには核となる微粒子が必要で、この役割を果たすエーロゾル(浮遊微粒子、煙霧質。エアロゾルともいう)を凝結核という。凝結がおこるためには、また空気が水蒸気の過飽和状態になければならないが、過飽和度が高いほど小さな粒子でも凝結核となりうる。この原理を応用したエーロゾルの濃度測定装置ではきわめて高い過飽和度を与えるので、極微小粒子も含めてほとんどのエーロゾルが微水滴となって計数される。この種の測定装置で計測される粒子を凝結核とよぶ習わしとなっているが、実際の大気中でおこる過飽和度はきわめて低く、たかだか1%程度にすぎないので、自然の霧粒や雲粒が生まれるときに凝結核として働く粒子は、粒子の半径がおよそ0.1マイクロメートル以上で吸湿性のものに限られる。それらの粒子を凝結核のうちでもとくに雲核とよぶ。これに対して半径およそ0.1マイクロメートルより小さい凝結核をエートケン核とよぶ。雲核のなかで重要なのは海塩粒子と硫酸アンモニウム粒子である。海塩粒子は、海面の泡の破裂によって大気中に飛び出した微細な海水滴が蒸発し、塩分のみが残って大気中に浮遊したものである。硫酸アンモニウム粒子は大気中で硫黄(いおう)成分を含むガスから生まれる。自然に発生するものもあるが、人間活動に起因して発生する汚染粒子の代表的なものとしてもっとも注目されている。
[三崎方郎]
『ナショナル・リサーチ・カウンシル編、和田攻ほか訳『気中粒子状物質』(1986・東京化学同人)』▽『高橋劭著『雲の物理――雲粒形成から雲運動まで』(1987・東京堂出版)』▽『本間克典編著『実用エアロゾルの計測と評価』(1990・技報堂出版)』▽『日本エアロゾル学会編、高橋幹二著『エアロゾル学の基礎』(2003・森北出版)』▽『三崎方郎著『微粒子が気候を変える――大気環境へのもう一つの視点』(中公新書)』
大気中の水蒸気が飽和し凝結して,微小水滴を作るとき,その中心となる液体や固体の微粒子。粒径によってエイトケン核(半径0.2μm以下),大核(半径0.2~1μm),巨大核(半径1μm以上)に,また吸湿性の有無によって吸湿性核,非吸湿性核に分けられる。凝結核の多くは,いろいろな種類の燃焼の結果生じる燃焼生成物,ケイ素を主とした地表面を起源とする土壌物質,海洋上の波しぶきや気泡の破裂によって生じる海塩粒子のほか,大気中の微量ガスが日射や湿度によって反応してできる粒子からなっている。したがって1cm3当りの凝結核数は場所や高度によって異なり,大都市で10万個以上,小都市で数万個,海洋上や2000m以上の山岳地帯では1000個以下である。
執筆者:菊地 勝弘
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…ふつうは空間に浮遊する微小なちりやイオンなどを核にして液滴が生ずることによって始まる。雲の発生などにかかわりのある,大気中の水蒸気の凝結の中心となる吸湿性の微粒子を凝結核と呼ぶが,これは直径10-5~10-4cm程度の燃焼生成物および海水のしぶきが乾燥してできる食塩微粒子などである。凝結核がない場合には,転移温度以下(あるいは転移圧力以上)になっても凝結は起こらず,過飽和状態になる。…
…雲粒は大気中の水蒸気が凝結して水滴となるか,昇華して氷晶となったものである。凝結が起こるためには凝結核(凝結の心)が必要である。水蒸気はいくら多く集まってもそれだけでは容易に水滴にはなりにくいが,凝結核があると容易に凝結が起こり,水蒸気が多く集まってきて水滴が形成される。…
※「凝結核」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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