石川達三の長編小説。1957年(昭和32)8月23日から59年4月12日にわたり『朝日新聞』連載。58~59年新潮社刊、全三冊。まじめな小学校教師尾崎ふみ子が、夫に背かれ、教師の職をも追われそうになって、しだいに教員組合の運動に目覚め、積極的な働き手となってゆく姿を粘り強く追い、その過程を通じ1954年前後の教育二法案成立と、それに対する現場教師たちの闘いを多角的に描いた雄編。教師聖職者観を否定し、教師も労働者にほかならぬという考えを最後的に打ち出している。「調べた芸術」の方法をフルに使い、教育問題をテーマにした作品としても戦後最大の小説。
[久保田正文]
『『人間の壁』全三冊(新潮文庫)』
貨幣 (名目) 賃金額を消費者物価指数でデフレートしたもので,基準時に比較した賃金の購買力を計測するために用いられる。こうしたとらえ方は,名目賃金の上昇が物価の上昇によって実質的には減価させられている...