日本大百科全書(ニッポニカ) 「介護者」の意味・わかりやすい解説
介護者
かいごしゃ
長期介護のニーズをもつ高齢者や障害者の日常生活上の援助を要介護者の自宅において無償で行う個人であり、要介護者の配偶者や家族、隣人や友人から構成される。イギリス英語ではケアラーcarer、アメリカ英語ではケアギバーcaregiverとよばれる。介護者の規模は、国によっては国勢調査を含む政府の調査や介護者団体による調査の対象になり、イギリス588万4450人、成人の12%(2001)、アメリカ3000~3800万人、18歳以上人口の13.6~17.2%(2006)、オーストラリア255万7000人、総人口の12.9%(2003)、フィンランド32万人、20歳以上人口の8.1%(2003)のように少なくない。介護者には、18歳未満の子供も含まれ、介護を担う子供とよばれる。男女の半数以上は、生涯のある時期に日常生活上の援助に携わるとの試算もある。性別には女性を主力にする(イギリス女性58%・男性42%、オーストラリア女性54.1%・男性45.9%)。日本の介護者の性別構成は、女性への傾斜が著しい(女性71.9%・男性28.1%、2007)。
日常生活上の援助に伴う影響は大きい。よく知られる影響は、仕事と介護の両立であり、やむなく両立をあきらめて離職を余儀なくされることもある。介護に拘束されることから、介護者が心と体の健康を害することも少なくない。とくに、週20時間以上にわたって日常生活上の援助を担う介護者の健康状態はよくない。要介護者の状態や世話に関心を寄せるあまり、自らの健康状態に心を配る介護者は少ない。介護者が、医療機関に姿をみせない患者もしくは隠れた患者と称されることもある。介護者が余暇を享受する機会は乏しい。
介護者が継続して日常生活上の援助を行い、あるいは、社会生活を他の人々と同じように享受することができるように、介護者を直接の対象にする支援が行われる。仕事と介護の両立に向けた介護休暇や働き方の柔軟化は、日本でも知られる方法である。支援は、介護手当や介護者手当、自治体に雇われるホームヘルパーの時間当り賃金に相当する額の賃金の支払いのほかにも、日常生活上の援助に費やした費用の所得税控除、介護技術の訓練、カウンセリング、休日や休暇の機会の整備、介護者グループの形成と運営、介護者支援センターの設置と運営などを通して行われる。介護者への支援を進めるために、介護者との接点の多い自治体職員や医師、看護師やホームヘルパーを対象にする啓発活動も行われる。直接の支援に対する介護者の評価は高く、要介護者への虐待などを未然に防ぐ効果も広く各国において認められる。
[三富紀敬]
『津止正敏・斎藤真緒著『男性介護者白書――家族介護者支援への提言』(2007・かもがわ出版)』▽『三富紀敬著『イギリスのコミュニティケアと介護者――介護者支援の国際的展開』(2008・ミネルヴァ書房)』