建設工事に必要な一時的な仮設備を設ける工事。仮設備は本工事完成後は原則として撤去されるもので、その構築のほか、維持、撤去、かたづけをも仮設工事に含む。工事の施工には一般に、工事用材料運搬のための荷役運搬設備、工事用プラント設備、仮施設としての動力・給排水・給気・換気などの設備、仮桟橋、足場、工事用仮設建物、安全・保安設備などの仮設備を必要とする。これらのほかに、水上工事の築島・仮締切り工や、地下掘削のための土止め工、コンクリート工事の型枠工などのように、各工種・工法によって必要となる仮設工事がある。とくに土止め・仮締切り工などは工事に及ぼす影響が大きく、設計・施工上も構造物本体と同様、十分な検討を要する。
工事用資機材の運搬、作業員の通路、足掛り、または危険物落下防止などのために作業用足場が必要である。このなかでとくに支柱、桁(けた)、梁(はり)による仮橋の構造のものを仮桟橋という。足場としては古くから丸太足場が広く使用されてきたが、最近は耐用年数が長く、材料が均質な鋼管足場やユニット式の枠組み足場が多用される。地上から組み上げる地足場のほかに、構造物の鉄骨やはね出し部などを利用してワイヤロープ、鋼材またはチェーンなどで作業床を吊(つ)り下げる形式の吊り足場も用いられる。仮桟橋は桁橋の形式を多く採用する。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
コンクリートまたは鉄筋コンクリート構造物を設計図どおりの所定の形状、寸法に仕上げるための仮設工作物である。コンクリートの鋳型の役目をするせき板と、これを所定の位置に固定する支保材とから構成され、打設したコンクリートがその自重および施工中に加わる荷重を受けるに必要な強度に達するまでコンクリートを支持し保護する。
型枠および支保工の材料としては木材、鋼材などがおもに用いられ、型枠パネル、支柱、梁などの型枠工事用ユニット部材も各種市販され、広く使用されている。
組立て、解体、移動という一連の型枠作業の省力化を図ったものとしてトラベリングフォームtravelling formや移動式支保工がある。1作業単位分の型枠および支保工を一体に製作し、順次移動させるもので、駆動機構をもつ大規模な型枠装置もある。橋梁(きょうりょう)、防波堤、トンネルなど断面形状の変化が少なく延長の長いコンクリート構造物の工事に多用される。煙突、水槽、サイロ、橋脚、立坑(たてこう)などの塔状構造物の施工には、コンクリートを打設しながら型枠を徐々に連続してせり上げるスリップフォームslip form(滑動型枠)も利用される。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
河川、湖沼あるいは海中に構造物をつくる場合、鋼矢板壁などによって締め切り、水の流入を阻止したうえで内部を排水した状態で工事を行う。このために設ける仮設の締切り構造物を仮締切り工という。締切り内部を土砂などで充填(じゅうてん)し人工島としたものを築島という。
仮締切り工法としては、通常は鋼矢板による一重締切り、二重締切り、セル型締切りが用いられる。水深が大きく、流れが速く、また岩盤などが露出して鋼矢板の打ち込みが不可能な場合などには、陸上で製作されたコンクリートブロックやケーソンcaissonを据え付けて堤体を構築することがある。水中に型枠を据え付け、場所打ちコンクリートを打設して締め切る方法もある。ほかに土堤による締切りや土俵締切りなどがあり、比較的水深が小さい所での短期間の工事などに用いられる。
一般に水深が10メートル程度を超えるような深い仮締切り工や水底地盤が軟弱な場合や、外海に面し高波の襲来が予想されるような場合には、仮締切り工の設計・施工上とくに慎重な配慮が必要であり、十分な安全度を確保しなければならない。堤防や護岸を開削して仮締切り工を設置するときは、破堤した場合、後背地に洪水時と同様な二次災害をもたらすので、仮締切り工には現堤と同等の安全度が要求される。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
地下掘削に伴う周辺の土砂の崩壊や地下水の著しい流入を防ぐために、土止め壁とこれを支える支保材を設ける。このための仮設材料や工事を総称して土止め工という。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
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