改訂新版 世界大百科事典 「仲間取引」の意味・わかりやすい解説
仲間取引 (なかまとりひき)
商品は一般には生産者→一次問屋→二次問屋→小売店といったぐあいに縦に流れるが,この流れからはみ出した横の取引をいう。仲間取引の場を仲間市場といい,そこで成立する相場を仲間相場と呼ぶ。仲間取引は,狭義には量のまとまる一次問屋どうしの取引をいうが,一次と他系列の二次,あるいは二次問屋間の取引をも総称する。仲間取引は縦の経路のなかでの荷の過不足を補う手だてとして自然に発生したものだが,品質差のない商品での荷の融通を主目的とするもののほか,ブランド(銘柄)交換を目的とするものがある。家電製品などブランド・イメージの強い商品の場合,取引メーカー以外の製品が欲しいという注文が入って,そのブランドがなければ,自分の手持ちブランド商品と交換する形で注文ブランドを他の問屋から仕入れるという例である。仲間取引を発生要因別に,(1)荷の融通機能を主とするもの,(2)ブランド交換機能を求めるものに分けると,(1)では鋼材,非鉄金属,石油製品,綿糸,毛糸,豆類などが代表例であり,(2)ではテレビ,ステレオなど家電製品,自由米などが代表的な商品となる。(1)の商品群は,(a)品質が比較的均一,(b)腐りにくく在庫しやすい,(c)需要家層が厚く広い,(d)生産と消費の間の取引段階が多い,といった特徴がある。いずれも仲間取引のやりやすい条件で,比較的早くから市場が生まれている。(2)の商品群は,メーカー系列の硬直性から抜け出して,需給実態に即応しようという動きが仲間市場を生み出していったといえる。〈自由米〉は食糧管理制度下における統制外のいわゆるやみ米だが,統制という縦経路のなかから消費者のうまい米志向や,より安い米を求める食堂など米飯提供者の需要を満たす場として自然に発生したもので,統制のひずみを正す面があることは否めない。
仲間取引は当事者どうしが相対で進めるのが普通だが,豆類,自由米,羊毛トップなどでは,業者仲間が情報交換や親睦の意味を込めて定期的に一堂に会して取引する席上取引という場もある。取引の参加者は一定の資格をもつ者に限られ,見本による現物取引が主体だが,あらかじめ受渡し,決済条件などが約束されている例が多い。仲間取引が継続性をもち,単なる荷の緊急融通だけでなく,先行きの見通しを含めた売買にまで進んだのが,糸や織物問屋間のオッパ取引である。ここではブローカー(仲介人)が間に入り,細かい取引の条件が決められている。売手が受渡しの期限内にいつでも勝手に買手に荷を引き取らせる(おっぱなす)ことができるところから,この名称が生まれたといわれる。
執筆者:米良 周
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報