伊予絣(読み)イヨガスリ

デジタル大辞泉 「伊予絣」の意味・読み・例文・類語

いよ‐がすり【×伊予×絣】

愛媛県松山市付近で産する木綿紺絣農村向けの作業着や夜具地などに用いる。松山絣

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精選版 日本国語大辞典 「伊予絣」の意味・読み・例文・類語

いよ‐がすり【伊予絣】

  1. 〘 名詞 〙 愛媛県松山市付近から産出する絣のもめん織物。享和一八〇一‐〇四)頃に始められたという。松山絣。
    1. [初出の実例]「薩摩絣か、久留米がすりか又伊予絣か分らないが」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一〇)

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改訂新版 世界大百科事典 「伊予絣」の意味・わかりやすい解説

伊予絣 (いよがすり)

木綿絣で松山絣ともいう。藍染の紺地絣,白地絣を主とする。伊予は久留米備後とともに綿絣の主産地。享和年間(1801-04)に,松山今出(いまず)生れの鍵谷カナがつくり出し今出鹿摺(いまずかすり)とも呼んだ。幕末ごろから縞柄が絣に移行し,1904年には全国一の座を占め県下の主産物であった。35年には200万反を産出したが,以降需要は減少の一途をたどっている。晒玉,扶桑紅梅,工夫絣,蚊絣,屋根絣などが織られ明治末ごろから色入絣も作られた。大柄は夜具地に,中小柄は平常着尺や作業衣に使われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊予絣」の意味・わかりやすい解説

伊予絣
いよがすり

愛媛県松山市付近を中心に織り出される絣木綿。この地方では、農家の副業として縞(しま)木綿が地機(じばた)で織られていたが、享和(きょうわ)年間(1801~1804)に温泉郡垣生村(はぶむら)(現、松山市)の鍵谷(かぎや)カナが久留米(くるめ)絣をまねたものをつくろうとし、いろいろ考案の結果、綿糸を染めて絣を織り出した。文化年間(1804~1818)には菊屋新助西陣より高機(たかばた)を導入して木綿絣用に改良、農民救済のため伊予縞と伊予絣が松山藩の保護奨励のもとに生産された。明治以後、久留米、備後(びんご)とならぶ三大綿絣産地の一つとなり、日露戦争直後の最盛期には、年産約247万反に上った。用途はこれまで農村の作業着が主体で、一部にふとん用の絵絣があった。染色はもと正藍(しょうあい)だけであったが、いまは人造藍ハイドロ建てとなり、織機足踏織機を一部に使っているが、力織機化されている。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「伊予絣」の意味・わかりやすい解説

伊予絣【いよがすり】

愛媛県松山市を中心に伊予郡,温泉郡で産出する絣の綿織物。松山絣とも。江戸時代後期鍵谷カナがつくり出した。紺絣が多く,じょうぶなので,平常着・作業着向き。
→関連項目愛媛[県]紺絣松山[市]綿織物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伊予絣」の意味・わかりやすい解説

伊予絣
いよがすり

伊予国つまり現在の愛媛県で織られる木綿絣の総称。松山市周辺が主産地で,道後絣の別名がある。 1800年頃,鍵谷かなが久留米絣にヒントを得て考案したとされる。明治後期に最盛期を迎え,夜具地,農作業衣などのほか着尺地にも用いられた。かつては,キリ,ツル,カメなどの絵絣を特色としたが,今日では十字絣,井桁 (いげた) 絣などの単純な総絣がほとんどである。

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