伏せる(読み)フセル

デジタル大辞泉 「伏せる」の意味・読み・例文・類語

ふ・せる【伏せる】

[動サ下一][文]ふ・す[サ下二]
下の方に向ける。うつむかせる。また、腹ばいになる。「顔を―・せる」「マットの上に―・せる」
上や表になる側、開いた側などを下に向ける。また、そのようにして、置く。「カードを―・せて配る」「本を机の上に―・せる」「網を―・せて虫を採る」
潜ませる。隠す。「物陰に身を―・せる」
知れ渡らないようにする。隠す。「契約を―・せておく」「名前を―・せる」
横にする。寝かせる。また、倒す。
「御傍らに―・せ給へり」〈帚木
[類語](1伏すうつ伏せる俯く突っ伏すうつぶすうつぶせ腹這い/(4秘める

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精選版 日本国語大辞典 「伏せる」の意味・読み・例文・類語

ふ・せる【伏・臥】

  1. 〘 他動詞 サ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ふ・す 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙
  2. 下を向かせる。うつむかせる。腹ばいにさせる。
    1. [初出の実例]「前に跪(ひざまつ)いて伏(フセ)つ」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)四)
  3. 横にする。倒す。寝かす。
    1. [初出の実例]「神風の伊勢の浜荻折り伏(ふせ)て旅寝やすらむ荒き浜辺に」(出典:万葉集(8C後)四・五〇〇)
  4. うつむけに置く。くつがえす。
    1. (イ) 器状のものをさかさまにする。裏を向ける。
      1. [初出の実例]「火処(ほところ)(や)き、覆槽(うけ)(フセ)て〈略〉顕神明之憑談(かむかかり)す」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
    2. (ロ) かぶせておさえる。
      1. [初出の実例]「先是から伊勢路へ掛って参れば、浜辺で鵆(ちどり)を伏する所が御座るが」(出典:虎寛本狂言・千鳥(室町末‐近世初))
    3. (ハ) 賭博(とばく)で、壺をさかさにして賽(さい)をおおう。転じて、博打を打つこともいう。
      1. [初出の実例]「なむさん、しめられた。夫又ふせるぞ」(出典:咄本・楽牽頭(1772)なぞ)
    4. (ニ) 物の表や上になる側、本などの開いた側を下に向ける。また、そのようにして置く。
      1. [初出の実例]「本を伏せて、ふと壁に向ふと」(出典:少年行(1907)〈中村星湖〉五)
  5. ひそませる。隠れさせる。
    1. [初出の実例]「かの道に夜ごとに人をふせてまもらすれば」(出典:古今和歌集(905‐914)恋三・六三二・詞書)
  6. 一面に置く。敷く。
    1. [初出の実例]「裳の縫ひ目に白銀の糸をふせて、くみのやうにし」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日)
  7. 屈服させる。従わせる。→説き伏せる
    1. [初出の実例]「シザイ ニ fuxeraretaru(フセラレタル) チョウテキ ト ナリタル ニヨッテ ナリ」(出典:信心録(ヒイデスの導師)(1592)一二)
  8. 中世、耕作地の一部を領主に報告しないで臥田(ふせだ)とする。
    1. [初出の実例]「注進 上村ふくけんにふする田事。合 三丁七反半十歩〈四百もんにてふせ候〉」(出典:高野山文書‐文永九年(1272)八月一三日・阿氐河庄上村臥田注文)
  9. 実情などを隠す。公表しない。
    1. [初出の実例]「それまでは千代春さんに秘(フ)せておかにゃア」(出典:人情本・郭の花笠(1836)三)
  10. つくろう。衣類を補修する。
    1. [初出の実例]「キルモノヲ fusuru(フスル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  11. ( 江戸時代、京坂地方で ) 何日と、日を限って約束・契約する。
    1. [初出の実例]「けふから四日目にふせておくが、さうしたならづぼらせずに来てくれるやろ」(出典:咄本・諺臍の宿替(19C中)五)

ふせ・る【伏・臥】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 横になる。ふす。うつぶす。病気で寝る意にもいう。
    1. [初出の実例]「創(きず)を病(やう)て臥(フセリ)たを」(出典:漢書列伝景徐抄(1477‐1515)陳勝項籍第一)

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