日本大百科全書(ニッポニカ) 「会計情報システム」の意味・わかりやすい解説
会計情報システム
かいけいじょうほうしすてむ
accounting information system
とくに営利企業で、企業内外の利害関係者への会計情報提供のために設計・運用される情報処理システム。英語の頭文字をとってAISともよばれる。経営者や管理責任者は、経営上の意思決定のため会計情報を必要とし、また企業は証券取引所、株主、金融機関、税務署などへの情報提供を行う必要もある。企業におけるコンピュータ等の情報機器利用の一般化と高度化により、会計情報システムは、伝票、仕訳帳、総勘定元帳、試算表から財務諸表作成に至る過程の処理に加えて、個別取引の明細、商品の入出荷、在庫、販売・購買情報なども含む広範な情報を取り扱うものとなった。現代では会計情報システムを、人事、製造、サプライチェーン(供給網)などを統合的に管理するERP(enterprise resource planning:企業資源計画)とよばれる企業の基幹業務システムの一部としてとらえる場合もある。
企業での伝票発行や元帳作成に関する計算機の導入は、1960年代から始まったとされている。1966年にアメリカ会計学会(AAA)から発表された「基礎的会計理論」A Statement of Basic Accounting Theory(ASOBAT)は、会計の目的は経済的意思決定などに役だつ情報の提供であるとし、会計実務を情報システムの活動として扱う観点を提起した。1980年代以降、データベース技術の普及により、購買・販売などの各種業務についての情報を入力した統合データベースから会計データを出力することも可能となった。
情報技術の発展に伴い、大企業では中間決算、四半期決算、適時情報開示といった形で、企業外部から要求される開示内容が質・量ともに拡大している。また企業内部においても、事務処理の合理化や、経営管理者にとって有用な情報の迅速な把握という目的にかなったシステムが追求される。一定期間または一定量の取引データをまとめて入力するバッチ処理に加えて、データが発生するつどオンラインで情報を入力するリアルタイム処理が実施されることで、経営管理者は財務情報をより早く入手できるようになった。またオンラインでの投資家への情報開示も一般化しており、日本では金融庁の運営する電子情報開示システムEDINET(エディネット)により、インターネット上で企業が有価証券報告書等の書類を財務局に提出し、投資家は開示書類を閲覧することができる。EDINETで開示される財務報告の内容はXBRL(eXtensible Business Reporting Language)とよばれる国際的に標準化されたコンピュータ言語で作成されており、情報利用者によるデータの加工や分析が容易になっている。
2010年代以降、クラウド会計ソフトの登場による外部ネットワーク上での会計情報処理や、人工知能(AI)の導入により予想される記帳作業自動化といった変化が、会計情報システムのあり方にも大きな影響を与えている。
[田中 圭 2023年1月19日]
『青木武典著『会計情報システム』(1996・日科技連出版社)』▽『河﨑照行著『情報会計システム論』(1997・中央経済社)』▽『小野保之著『会計情報システム論』(2000・同文舘出版)』▽『上總康行・上古融著『会計情報システム』(2000・中央経済社)』