神主(読み)カンヌシ

デジタル大辞泉 「神主」の意味・読み・例文・類語

かん‐ぬし【神主】

神社に奉仕して、神事に従うことを業としている人。神官神職。また、その長。
[類語]神職神官宮司禰宜社司

しん‐しゅ【神主】

《古くは「じんしゅ」とも》
もののたましい。
儒教の葬礼で、死者の官位・姓名を書く霊牌。仏教の位牌にあたる。
かんぬし」に同じ。
仮令たとへば、―、祝部はふりの名には」〈色道大鏡・一一〉

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精選版 日本国語大辞典 「神主」の意味・読み・例文・類語

かん‐ぬし【神主】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かむぬし」とも表記 )
  2. 臨時に神を祭るときに、主となって事を行なう人。神事を主宰する人。祭主(さいしゅ)
    1. [初出の実例]「大田田根子命を以て、大物主大神を祭(いやま)う主(カムヌシ)と為(し)」(出典:日本書紀(720)崇神七年八月(熱田本訓))
  3. 神社に仕える神人の長。禰宜(ねぎ)、祝部(はふりべ)などの上に立って、神事に関するいっさいのことをつかさどる人。
    1. [初出の実例]「伊勢国人磯部祖父、高志二人、賜姓渡相神主」(出典:続日本紀‐和銅四年(711)三月辛亥)
    2. 「集(うこま)り侍(はんへ)る神主(カムヌシ)・祝部(はふりへ)(たち)」(出典:延喜式(927)祝詞(出雲板訓))
  4. ( 広く一般に用いて ) 神に仕える人。神官。神道家。神職。
    1. [初出の実例]「一人の神主、御神付て出来て示して云く」(出典:今昔物語集(1120頃か)四)
  5. ( 神職である禰宜(ねぎ)と、植物のネギとが同音であるところから ) ネギをいう隠語。主として僧侶仲間で用いられる。
    1. [初出の実例]「鳧(かも)明神、葱(ねぎ)を神主などと名付け」(出典:談義本・根無草(1763‐69)前)

しん‐しゅ【神主】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「じんしゅ」とも )
  2. ものの霊。ぬし。
  3. 儒葬で死者の官位・姓名を書き祠堂に安置する霊牌。仏教の位牌にあたるもの。木主。
    1. [初出の実例]「ここが烏乱(うろん)御座候ては、神主を立ても異なものに存じ候」(出典:雑話筆記(1719‐61)上)
    2. [その他の文献]〔五代史記‐周本紀〕
  4. 神につかえる人。神官。神職。かんぬし。〔いろは字(1559)〕
    1. [初出の実例]「仮令(たとへば)、神主(シンシュ)、祝部(はうり)の名には、左京右京・〈略〉織部宮内などいふこそ相応すべけれ」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一一)

こう‐ぬしかう‥【神主】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「こう」は「かみ」の変化した語 ) =かんぬし(神主)
    1. [初出の実例]「稲荷には禰宜も祝もかうぬしも無きやらん 社壊れて神さびにけり」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)

かむ‐ぬし【神主】

  1. 〘 名詞 〙かんぬし(神主)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神主」の意味・わかりやすい解説

神主
かんぬし

もとは神事をつかさどる者、あるいは神を祀(まつ)る聖なる者の意である。現在は神職と同義に用いられる。『古事記』崇神(すじん)天皇の条に「意富多多泥古命(おほたたねこのみこと)を以(も)ちて神主と為(し)て、御諸(みもろ)山に意富美和之大神(おほみわのおほかみ)の前(みまえ)を拝(いつ)き祭りたまひき」とあり、また『日本書紀』には神功(じんぐう)皇后自らが斎宮に入って神主となり、託宣を行ったことがみえる。上古には祭政一致であったため氏上(うじのかみ)が氏人を率いて奉祀(ほうし)したり、また国造(くにのみやつこ)、県主(あがたぬし)などの地方長官が司祭者として祭祀を行った。各地の神社のなかには、大(おお)神主、総神主、権(ごん)神主などとよばれるものもあり、また神職としては宮司(ぐうじ)、神主、禰宜(ねぎ)、祝(はふり)、巫(かんなぎ)などがあった。宮司は主として神社全般の事務管掌責任者であるが、神主はもっぱら祭祀のことに奉仕する最上位の職であった。近世以後はこれらの神職を総称して俗に神主とよぶようになった。また民間では、宮座を構成する人々のなかから1年交代で神主を務める当屋(とうや)神主、一年神主年番(ねんばん)神主の制が近代まで広く行われた。選ばれた者は1年間は精進潔斎し、村人全体の代表者として神に奉仕する一方、村人に対しては神の象徴として臨み、氏神の祭祀にあたった。

[森安 仁]

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改訂新版 世界大百科事典 「神主」の意味・わかりやすい解説

神主 (かんぬし)

一般に神社で神事に仕える人をいう。神官,神職とも同義に使われることもある。初見は,崇神天皇のときに大物主(おおものぬし)命がたたり疫病蔓延したおり,神孫の意富多多泥古(おおたたねこ)を神主としてまつらしめたところ,天下の平安を得たという(《古事記》)。つまり,上代においては,神主となる条件として血縁関係が重要とされたことを物語る。《延喜式》に収載する祝詞には,〈集侍(うごな)はれる神主・祝部(はふりべ)等諸聞食(きこしめ)せと宣る〉と見え,上級の神官をさしたものと思われる。また,民間では宮座などで神事の主役にあずかる人を神主といい,一年神主という言葉もある。氏子の人々が回り番で1年ずつ神主を務めるところからの命名であり,主として近畿地方に多い。島根県の美保神社では,神社所属の神職とともに,この一年神主の制度があり,祭祀の中心的役割をはたし一種の神がかり状態となり,時によっては託宣もする。文字どおり一時的に神になり代わるわけで,こうした役割をもつものを本来の神主と見る説もある。
神人(じにん) →神職
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普及版 字通 「神主」の読み・字形・画数・意味

【神主】しんしゆ

。〔後漢書、光武帝紀上〕(建武二年)大司徒禹、長安に入り、府掾をはして十一を奉じ、高れしむ。

字通「神」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「神主」の意味・わかりやすい解説

神主【かんぬし】

現在では神職をさす一般的呼称。《古事記》にみえているが,元来は神に仕える集団の総意を神に伝え,また神意を伝達し,祭祀を主宰するもので,氏族の長がこれに当たったと考えられる。後に一年神主などのように氏子(うじこ)中より選ばれるようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の神主の言及

【位牌】より

…一般に葬式の際に白木に墨書した二つの仮位牌を作り,一つは墓地へ,他は家の仏棚に安置し,忌明けの四十九日ないし一~三年忌のときに漆塗や金箔塗の本位牌に換える。仏教の位牌は儒教の神主(しんしゆ)や神道の霊代(みたましろ)に相当する。日本には禅僧が中国より伝えたものとみられるが,それ以前は民俗的なイハイギや南島に今日もみられる香炉(壺)などであったと考えられる。…

【一年神主】より

…年番神主,頭屋(とうや)神主ともいい,宮座の中で1年交代で神事の主宰に当たる者のこと。神主というと,今日ではとかく専業の神職を意味するようになっているが,本来は祭り主,斎(いわ)い主の意であるから,宮座のように祭祀集団を構成し,1年交代で神事を主宰するというのは祭りの古態なのである。…

【諸社禰宜神主法度】より

…本法度は5ヵ条からなっている。第1条は〈諸社の禰宜,神主などはもっぱら神祇道を学び,神体を崇敬し,神事祭礼をつとめること〉,第2条は〈社家が位階を受ける場合,朝廷に執奏する公家(寺社伝奏)が前々よりある場合は,これまでどおりとする〉,第3条は〈無位の社人は白張を着すように。白張以外の装束(狩衣など)を着けるときは吉田家の許状を受けること〉,第4条は〈神領はいっさい売買しても質に入れてもいけない〉,第5条は〈神社は小破のときに修理を加えて維持につとめ,掃除を怠らないように〉という内容であった。…

※「神主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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