もとは神事をつかさどる者、あるいは神を祀(まつ)る聖なる者の意である。現在は神職と同義に用いられる。『古事記』崇神(すじん)天皇の条に「意富多多泥古命(おほたたねこのみこと)を以(も)ちて神主と為(し)て、御諸(みもろ)山に意富美和之大神(おほみわのおほかみ)の前(みまえ)を拝(いつ)き祭りたまひき」とあり、また『日本書紀』には神功(じんぐう)皇后自らが斎宮に入って神主となり、託宣を行ったことがみえる。上古には祭政一致であったため氏上(うじのかみ)が氏人を率いて奉祀(ほうし)したり、また国造(くにのみやつこ)、県主(あがたぬし)などの地方長官が司祭者として祭祀を行った。各地の神社のなかには、大(おお)神主、総神主、権(ごん)神主などとよばれるものもあり、また神職としては宮司(ぐうじ)、神主、禰宜(ねぎ)、祝(はふり)、巫(かんなぎ)などがあった。宮司は主として神社全般の事務管掌責任者であるが、神主はもっぱら祭祀のことに奉仕する最上位の職であった。近世以後はこれらの神職を総称して俗に神主とよぶようになった。また民間では、宮座を構成する人々のなかから1年交代で神主を務める当屋(とうや)神主、一年神主、年番(ねんばん)神主の制が近代まで広く行われた。選ばれた者は1年間は精進潔斎し、村人全体の代表者として神に奉仕する一方、村人に対しては神の象徴として臨み、氏神の祭祀にあたった。
[森安 仁]
一般に神社で神事に仕える人をいう。神官,神職とも同義に使われることもある。初見は,崇神天皇のときに大物主(おおものぬし)命がたたり疫病蔓延したおり,神孫の意富多多泥古(おおたたねこ)を神主としてまつらしめたところ,天下の平安を得たという(《古事記》)。つまり,上代においては,神主となる条件として血縁関係が重要とされたことを物語る。《延喜式》に収載する祝詞には,〈集侍(うごな)はれる神主・祝部(はふりべ)等諸聞食(きこしめ)せと宣る〉と見え,上級の神官をさしたものと思われる。また,民間では宮座などで神事の主役にあずかる人を神主といい,一年神主という言葉もある。氏子の人々が回り番で1年ずつ神主を務めるところからの命名であり,主として近畿地方に多い。島根県の美保神社では,神社所属の神職とともに,この一年神主の制度があり,祭祀の中心的役割をはたし一種の神がかり状態となり,時によっては託宣もする。文字どおり一時的に神になり代わるわけで,こうした役割をもつものを本来の神主と見る説もある。
→神人(じにん) →神職
執筆者:茂木 貞純
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…一般に葬式の際に白木に墨書した二つの仮位牌を作り,一つは墓地へ,他は家の仏棚に安置し,忌明けの四十九日ないし一~三年忌のときに漆塗や金箔塗の本位牌に換える。仏教の位牌は儒教の神主(しんしゆ)や神道の霊代(みたましろ)に相当する。日本には禅僧が中国より伝えたものとみられるが,それ以前は民俗的なイハイギや南島に今日もみられる香炉(壺)などであったと考えられる。…
…年番神主,頭屋(とうや)神主ともいい,宮座の中で1年交代で神事の主宰に当たる者のこと。神主というと,今日ではとかく専業の神職を意味するようになっているが,本来は祭り主,斎(いわ)い主の意であるから,宮座のように祭祀集団を構成し,1年交代で神事を主宰するというのは祭りの古態なのである。…
…本法度は5ヵ条からなっている。第1条は〈諸社の禰宜,神主などはもっぱら神祇道を学び,神体を崇敬し,神事祭礼をつとめること〉,第2条は〈社家が位階を受ける場合,朝廷に執奏する公家(寺社伝奏)が前々よりある場合は,これまでどおりとする〉,第3条は〈無位の社人は白張を着すように。白張以外の装束(狩衣など)を着けるときは吉田家の許状を受けること〉,第4条は〈神領はいっさい売買しても質に入れてもいけない〉,第5条は〈神社は小破のときに修理を加えて維持につとめ,掃除を怠らないように〉という内容であった。…
※「神主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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