住宅費の高騰による生計費の圧迫を緩和するために支払われる手当。わが国では、家族手当、通勤手当とともに賃金体系に含まれている。しかし、住宅費の高騰に比べてその額はきわめて低額である。この手当の支給額の算定方法には、定額方式と定率方式がある。前者は、住宅の区分(借家、持ち家)、扶養家族の有無、世帯主であるか否かなどの条件によって異なった額が支給される。後者は、基本給に一定率を乗じたものが支払われる。前者のほうが普及している。労働省(現厚生労働省)の「賃金労働時間制度等総合調査」(1999年12月)によれば、従業員1000人以上の企業では56.5%、全企業平均では49.2%の企業において住宅手当が支払われている。
[湯浅良雄]
家賃などの住宅費にあてるものとして労働者に支給される手当。もともと第2次大戦中および戦後の住宅難を背景に,社宅等の給与住宅施設を有する企業で廉価な社宅に居住する者とその他との調整を図ることを目的に支給されるようになったもので,高度経済成長期に住宅費負担の急増を反映して普及した。労働省調査によれば,その採用率は1950年に全企業平均(事業所単位)で9%であったが,65年には17%に増加し,80年には採用企業は44%となっている。またこの間に支給範囲も拡大し,最近では給与住宅施設のない企業でも支給されたり,自宅通勤者や寮・社宅通勤者にも支給される例が増えているが,このことは,住宅手当の性格が均衡手当的なものから生活保障手当的なものへと変化しつつあることを示しているといってよい。
執筆者:上井 喜彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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