人の住居に他人がみだりに立ち入ることを禁じる法律上の原則。広い意味での住居の不可侵性は,ローマ法やイギリス法で古くから認められていた。しかし,近代において,この原則は,とくに官憲による私人の住居への恣意的な侵入や捜索を禁じる憲法上の原則として理解されている。このような意味での住居の不可侵性は,18世紀のイギリスで確認され,アメリカ合衆国憲法に引き継がれた。日本国憲法も,原則として,裁判官が,正当な理由に基づいて,捜索の場所を明示して発付する各別の令状によらなければ,住居に侵入されたり捜索されたりしない権利を人々に保障している(35条)。これは,旧憲法が,〈法律ニ定メタル場合〉であれば侵入,捜索を許していた(大日本帝国憲法25条)のに比べて,住居の不可侵性をより厚く保護したものである。住居の不可侵性は,家屋に対する財産権を保護するにとどまるものではなく,プライバシーの権利の一種でもある。したがって,物理的な侵入を伴わない盗聴なども問題となる。また,住居とは住宅に限らず,広く私的生活の行われる場を意味する。
→住居侵入罪 →捜索
執筆者:後藤 昭
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居住者の承諾なしに、その住居に侵入したり、捜索・押収してはならないということ。「各人の住居は各人の城である」とイギリスの古い法諺(ほうげん)にもあるように、このことは古くから私生活上の重要な権利とされてきた。いうまでもなく、私生活の場所に侵入、捜索がなされれば、私人は安穏な生活を送りえないわけで、私生活の幸福追求の見地から、立憲主義憲法にはかならずこのことが明記されている。明治憲法にも住居の不可侵が定められていた(25条)が、法律の留保という例外が認められていたので、不完全な保障にすぎなかった。これに対し、現行憲法は、現行犯、令状による逮捕の場合以外は、捜索場所を明示する個別の令状がなければ住居に侵入、捜索できず、書類・所持品の押収についても令状が必要とされ(35条)、例外的な権能の乱用によって私生活が侵されることのないように、厳格な要件が付された。そして現在は、個人のプライバシー権を保護するという見地から、本人の住まいだけでなく、会社、学校、事務所、旅館の客室なども住居に含まれると解釈されている。
[池田政章]
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