佐井(読み)さい

改訂新版 世界大百科事典 「佐井」の意味・わかりやすい解説

佐井[村] (さい)

青森県北部,下北郡の村。人口2422(2010)。下北半島西部にあり,津軽海峡に面する。山地が海岸まで迫り,山林は村域の96%に達する。中小の河川河口集落が立地し,耕地は北部の海岸段丘上の原田と,1949年に入植開拓された野平にわずかにあるのみで,零細な漁業が主産業となっている。中心の佐井は天然の良港で,近世にヒバ材の積出港として発達し,蝦夷地への渡航地でもあったが,大正末期以降はさびれた。下北半島でも最も僻遠の地であったが,69年に川内(現,むつ市)方面から〈かもしかライン〉,74年に脇野沢村(現,同市)から〈海峡ライン〉の道路が開通し,交通の便がよくなった。牛滝~福浦間の海岸は下北半島国定公園に属する仏ヶ浦(仏宇多)と呼ばれる景勝地で,75年には沖合が海中公園に指定され,恐山と並ぶ下北の観光の中心となっている。脇野沢などを経由する佐井~青森間には船の便がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「佐井」の意味・わかりやすい解説

佐井(村)
さい

青森県北東部、下北郡(しもきたぐん)にある村。下北半島西部にあり、津軽海峡に臨む。村の大部分が恐山山地(おそれざんさんち)からなり、平地に乏しく、海岸に集落が点在する。佐井港は江戸時代以前から良港として知られ、下北産のヒバ材の積出し港として明治まで続いた。山地のほとんどが国有林で、産業はわずかな耕地での米作と肉用牛の飼育、沿岸漁業などが行われる。海岸一帯は下北半島国定公園の一部で、仏ヶ浦(ほとけがうら)(国指定名勝・天然記念物)の景勝がある。国道338号のほか観光道路も通じ、佐井港と青森港間には定期船便があり、観光に力を入れている。面積135.04平方キロメートル、人口1788(2020)。

横山 弘]

『『佐井村誌』2冊(1971、1972・佐井村)』


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