知恵蔵 「佐藤秀峰」の解説
佐藤秀峰
講談社の「週刊モーニング」に連載されていた『ブラックジャックによろしく』は、2006年に長期休載後、小学館の「ビッグコミックスピリッツ」に移籍し『新ブラックジャックによろしく』として再開し、その経緯が注目されていた。09年に自身のブログで、これらの要因となる出版社との様々なあつれきや、原稿料や経費の実情などを次々に公開し話題になった。10年3月には雑誌や書籍によらないマンガの発表の場を求めて、インターネット上でマンガを出展・販売するサイト「漫画 on Web」をオープンし、これを運営する有限会社佐藤漫画製作所代表を務めている。
マンガの出版では大手数社による寡占化が進んでおり、作者と編集部とのトラブルが取りざたされることがしばしばあった。また、社会派の佐藤作品には、作者・アシスタント、原案のみならず、取材、資料収集などが必要で、作者と出版社編集部の共同作業に負うことが大きい。こうしたなかで、出版社編集部に対して原稿料の増額交渉の決裂や作品の無断2次使用、せりふの改変などで不信感が募り休載を余儀なくされた経緯や、原稿料が抑えられており経費を支払うと赤字になり、単行本が売れない限りは生活に事欠く台所事情などを公開した。時を前後して、他のマンガ家からも出版社に対する様々な苦言が散見された。このままでは、「漫画家のなり手がいなくなり、10年後、漫画はあるのでしょうか」と憂えた佐藤氏は、出版社を通じてしか作品を届けられない体制からの脱却を目指して、ネット上でのマンガの配信を開始した。大手出版社もマンガの有料配信を手掛けており、今後のマンガ配信や作者と出版社の関係などにも少なからぬ影響を与える可能性が示唆されている。
(金谷俊秀 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報