何処へ(読み)ドコヘ

デジタル大辞泉 「何処へ」の意味・読み・例文・類語

どこへ【何処へ】

正宗白鳥小説初期代表作で、雑誌記者の青年の虚無的な感覚を描く。明治41年(1908)、「早稲田文学」1~4月号に掲載同名の作品集は同年10月に刊行

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精選版 日本国語大辞典 「何処へ」の意味・読み・例文・類語

どこ‐へ【何処へ】

感動〙 (疑問代名詞「どこ」に助詞「へ」の付いたものから)
発言行動をさえぎることば。不承知で、そうはいかないの意を表わす。「なんの」「どうして」などに近いののしりの気持を込めていう。この語が変化して「どっこい」となったという。
歌舞伎傾城浅間嶽(1698)上「『俺は諏訪殿の連合ひ、後室なれば殿ぢゃ』和田右衛門聞き『どこへ殿、其方は以前な下様の奉公人であったを』」
② かけ声。特に歌舞伎の化粧声として用いる。どっこい。
※歌舞伎・名歌徳三舛玉垣(1801)三立「『どこへ』『サアサア暫くだ暫くだ。根元根本無類まじりなし、随市川の恵本尊、日本一の暫くだぞ』」

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改訂新版 世界大百科事典 「何処へ」の意味・わかりやすい解説

何処へ (どこへ)

正宗白鳥の初期代表作。1908年(明治41)1~4月に《早稲田文学》に発表。独身の雑誌記者菅沼健次は,家名を尊重する〈家〉の重圧の下で,倦怠と孤独の日々を送っている。恩師の期待にこたえることもなく無為に過ごす彼には,どこにも人生の意義を見いだせない虚無感が深く,現状からの脱出を願いながら,どこへ逃げ出せばいいのか方角がわからない。二葉亭四迷が《浮雲》に造型した内海文三やツルゲーネフの《ルージン》に比較される余計者的存在が描かれたわけである。封建的な家父長権制度の中で抑圧され,ゆがめられてゆく青年への共感が認められるが,解決への道は閉ざされている。無理想・無解決を標榜する自然主義の代表作として迎えられたゆえんである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「何処へ」の意味・わかりやすい解説

何処へ
どこへ

正宗白鳥(まさむねはくちょう)初期の代表的短編小説。1908年(明治41)1月から4月号の『早稲田(わせだ)文学』に掲載。主義にも読書にも酒や女にも、また己の才知にも酔えぬわが身を哀れに感じつつも、何処へ生きる方向を求めてよいかわからず、父や師の期待をよそに怠惰で倦怠(けんたい)な日々を送る27歳の雑誌記者菅沼(すがぬま)健次が主人公。この一作を機に批評家から、健次すなわち白鳥は「日本のナイヒリスト(ニヒリストの意)」であるとよばれ、以来その白鳥観は彼の死の年まで継承された。しかしこの呼称は健次のつねに「生命に満ちた生活」を希求し行動への憧(あこが)れを抱いている面があまりに看過されたところから生じたもので、以後の作品をもあわせ百パーセント適切とはいえない。

[兵藤正之助]

『『正宗白鳥全集1』(1983・福武書店)』

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