便潜血反応(読み)べんせんけつはんのう

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「便潜血反応」の解説

便潜血反応

基準値

陰性(-)


消化器などが障害を受けると便に血が混じる。

・便に鮮紅色の血が付着 →大腸下部、直腸のがんなど

・便に赤黒い血液が混入 →大腸上部のがんなど

・黒い便(タール便) →食道がん胃がんなど

便に血液(潜血)が出ているかどうかを調べる検査です。陽性・偽陽性の場合は再検査し、それでも陽性なら、さらにくわしい検査を行います。

消化管出血の診断に重要

 直腸からの出血や直腸がんなど)は、便の周辺に血が付着するため出血が一目瞭然ですが、それより上部の大腸や小腸からなどでは、出血していても肉眼ではなかなかわかりません。

 このような便の中に、肉眼ではわからない血液(潜血)が出ていないかを調べる検査が便潜血反応で、おもに消化器系の病気を疑うときに行います。

化学的測定法、免疫学的測定法で調べる

 便潜血反応の検査には、化学的測定法と免疫学的測定法があります。

・化学的測定法

 これは、試験紙を使って試験紙の色の変化で判定します。この方法では、前日に肉類や鉄剤をとっていると陽性に、緑黄色野菜やビタミンCをとっていると陰性に出ることがあるため、この方法で行うときは食事制限の指示が出されます。

・免疫学的測定法

 これは、人のヘモグロビンに対する抗体を使用して潜血がないかどうかを調べる検査で、食事制限はありません。この方法にも難点があり、食道や胃などの上部消化管からの微量出血では、ヘモグロビンは胃液によって変性を受けるなどして陰性になることがあります。

 この方法は、下部消化管の出血の検出に向いています。とくに、大腸がんスクリーニングふるい分け)検査として広く用いられており、連続2日検査すれば、進行がんでは90%、早期がんでは50%が拾い上げられるという報告があります。出血が疑われるときは、両方の方法で測定するのが一般的です。

陽性・偽陽性のときは再検査

 便潜血反応が陰性だからといって、消化管出血が否定できるわけではありません。逆に陽性だからといって、消化管出血が断定できるわけでもありません。

 陽性・偽陽性の場合は再検査し、それでも陽性なら、さらにくわしい検査をして出血の部位を究明していきます。

 化学的測定法で検査したときは、上で述べたように食事の影響があるため、陽性の場合には、病院で用意される特別な食事(潜血食)をとったのち再検査して、それでも陽性なら便潜血反応陽性と判定します。

 なお、出血液は便の中に均等に分布しているわけではなく、検査に用いた便には血が混じっていないこともあります。そのため、便のいろいろな箇所を連続して数日間、検査することもあります。

疑われるおもな病気などは

◆陽性→上部消化管出血:食道静脈りゅう、食道がん、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなど

    下部消化管出血:大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、大腸憩室炎、寄生虫など

    その他:肝胆道疾患、すい臓がんなど

医師が使う一般用語
「べんせん」=「便潜血反応」の略

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「便潜血反応」の解説

便潜血反応
(食道・胃・腸の病気)

 便に血液が混入していないかどうかを調べる検査です。病院で渡される容器に少量の便をとって持参します。口腔から肛門までの全消化管のどこかに出血性病変があれば陽性となりますが、日本でよく用いられる検査法(免疫法)では、食道、胃などの上部消化管では陽性になりにくいことがあります。また、小腸、大腸でも、少量の出血では検出されないことがあります。

 健康診断や人間ドックの一部として大腸がんスクリーニングのために行う場合や、貧血、腹痛などのある人にその原因を調べる目的で行う場合があります。

 便潜血反応が陽性であった場合は、大腸内視鏡検査か注腸造影検査で大腸を調べる必要があり、これによって大腸がんや大腸ポリープ、潰瘍などが発見されることがあります。また、便潜血反応が陰性であっても、病気がないと断定することはできません。大腸ポリープなどの病変があってもいつも出血しているとは限らないからです。

 症状や経過などから腸の病気が強く疑われる場合には、やはり内視鏡などの検査を行います。痔があり出血している時にも便潜血反応は陽性になりますが、出血しているのが痔だけなのか、大腸にも病気があるのかはわからないので、このような時も内視鏡などの検査を行うほうがよい場合があります。

 便潜血反応は、繰り返し行うことで陽性となる確率が上がり正確性が増すため、2日間連続して検査をすることもあります。この場合、1回分でも陽性になったら精密検査が必要です。簡便で有用性の高い検査ですが、陰性でも大腸がんやポリープがないとはいえないので、50歳を過ぎたら大腸検査を受けるべきでしょう。

 便潜血反応で現在、主に用いられている免疫法では食事制限は不要ですが、検査法によっては数日前からの食事制限を指示される場合があります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報