保存力(読み)ホゾンリョク(英語表記)conservative force

デジタル大辞泉 「保存力」の意味・読み・例文・類語

ほぞん‐りょく【保存力】

物体が力の作用を受けながら、ある点から別の点に移動したとき、仕事経路によらず一定となるような力。ポテンシャル微分すると得られ、位置エネルギー運動エネルギーの和は常に保存される。重力ばね復元力クーロン力などがある。⇔非保存力

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精選版 日本国語大辞典 「保存力」の意味・読み・例文・類語

ほぞん‐りょく【保存力】

  1. 〘 名詞 〙 二点間を質点が移動するとき、その径路と関係なく、質点に働く仕事が一定であるような力。静電力や磁気力万有引力の類。

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改訂新版 世界大百科事典 「保存力」の意味・わかりやすい解説

保存力 (ほぞんりょく)
conservative force

ポテンシャルの微分によって得られる力。ポテンシャルをUxyz)とするとき,力FはF=-∇Uと書かれる(これはFxyz方向成分をそれぞれFxFyFzとして,Fx=-∂U/∂xFy=-∂U/∂yFz=-∂U/∂zを表す)。このとき,この力を受けて運動する質点の力学的全エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギーの和)は,運動の間じゅう,同じ値をとる。これを力学的エネルギーの保存則という。この際,ポテンシャルがちょうど位置エネルギーとなる。ばねによる復元力,万有引力などは保存力の例である。

 ポテンシャルから導かれない非保存力の典型は,摩擦力,抵抗力である。この種の力のする仕事の分だけ,力学的全エネルギーは減少する。増加はなく,つねに減少であるのは熱力学の第2法則とも関連している。

 保存力は,質点の場所のみの関数であるが,非保存力は一般に速度に依存する。例えば動摩擦力は,速度の反対方向に働くし,抵抗力は,一般に速度とともに増大する。
ポテンシャル
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「保存力」の意味・わかりやすい解説

保存力
ほぞんりょく
conservative force

位置エネルギーをもつ力。位置 r での位置エネルギー (またはポテンシャルエネルギー) を V(r) とすると,保存力は F=-gradV(r) で与えられる。重力,ばねのフック力,万有引力,クーロン力などは保存力であり,摩擦力,ローレンツ力は保存力でない。保存力だけが働く力学系では力学的エネルギー保存則が成り立つので,この名がある。

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世界大百科事典(旧版)内の保存力の言及

【位置エネルギー】より

…重力の場合,位置エネルギーは高さだけで決まり,地上からその位置までの道筋や,そこまでもち上げる方法にはよらない。このように力の働いている中で位置QからPまで物体を力に逆らって移動させるとき,仕事Wの大きさがその経路によらず,始めと終りの位置PとQだけで決まる場合,その力を保存力という。上の例の重力やばねの伸びに比例する力は保存力である。…

【エネルギー】より

…すなわち重力の働いているところで,h1という高さからh2という高さまで物体が動くとき,重力のする仕事Wmg(h1h2)のように(gは重力の加速度),位置だけの関数Vmghの場所1での値と場所2での値の差V1V2の形に表され,どんな経路を通ってどんなやり方で1から2へ移すか,ということには依存しない。このような性質をもった力を保存力という。重力は保存力である。…

【力】より

… このほか古典力学ではばねの力(弾性力)も重要である。このばねの力,先にあげた万有引力,重力などは力学的エネルギーの保存則を成り立たせる保存力として位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)をもつ。すなわちこれら保存力の働いている所で物体を移動させると,力がその際する仕事は,そのときの位置エネルギーの減り高に等しくなる。…

【ポテンシャル】より

…ポテンシャルをU(x,y,z)とするとき,ベクトル解析の記号で力Fは, F=-∇U=-gradU  ……(1) と表されるが,これはFx,y,z方向の成分をFx,Fy,Fzとすると,を意味している。このようにして与えられる力をとくに保存力というが,それは,この力を受けて運動する質点の力学的エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギーの和)が保存されるからである。この際の位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)がポテンシャルUにほかならない。…

※「保存力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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