ポテンシャルの微分によって得られる力。ポテンシャルをU(x,y,z)とするとき,力FはF=-∇Uと書かれる(これはFのx,y,z方向成分をそれぞれFx,Fy,Fzとして,Fx=-∂U/∂x,Fy=-∂U/∂y,Fz=-∂U/∂zを表す)。このとき,この力を受けて運動する質点の力学的全エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギーの和)は,運動の間じゅう,同じ値をとる。これを力学的エネルギーの保存則という。この際,ポテンシャルがちょうど位置エネルギーとなる。ばねによる復元力,万有引力などは保存力の例である。
ポテンシャルから導かれない非保存力の典型は,摩擦力,抵抗力である。この種の力のする仕事の分だけ,力学的全エネルギーは減少する。増加はなく,つねに減少であるのは熱力学の第2法則とも関連している。
保存力は,質点の場所のみの関数であるが,非保存力は一般に速度に依存する。例えば動摩擦力は,速度の反対方向に働くし,抵抗力は,一般に速度とともに増大する。
→ポテンシャル
執筆者:藤井 保憲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…重力の場合,位置エネルギーは高さだけで決まり,地上からその位置までの道筋や,そこまでもち上げる方法にはよらない。このように力の働いている中で位置QからPまで物体を力に逆らって移動させるとき,仕事Wの大きさがその経路によらず,始めと終りの位置PとQだけで決まる場合,その力を保存力という。上の例の重力やばねの伸びに比例する力は保存力である。…
…すなわち重力の働いているところで,h1という高さからh2という高さまで物体が動くとき,重力のする仕事Wはmg(h1-h2)のように(gは重力の加速度),位置だけの関数V=mghの場所1での値と場所2での値の差V1-V2の形に表され,どんな経路を通ってどんなやり方で1から2へ移すか,ということには依存しない。このような性質をもった力を保存力という。重力は保存力である。…
… このほか古典力学ではばねの力(弾性力)も重要である。このばねの力,先にあげた万有引力,重力などは力学的エネルギーの保存則を成り立たせる保存力として位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)をもつ。すなわちこれら保存力の働いている所で物体を移動させると,力がその際する仕事は,そのときの位置エネルギーの減り高に等しくなる。…
…ポテンシャルをU(x,y,z)とするとき,ベクトル解析の記号で力Fは, F=-∇U=-gradU ……(1) と表されるが,これはFのx,y,z方向の成分をFx,Fy,Fzとすると,を意味している。このようにして与えられる力をとくに保存力というが,それは,この力を受けて運動する質点の力学的エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギーの和)が保存されるからである。この際の位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)がポテンシャルUにほかならない。…
※「保存力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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