健康増進法(読み)けんこうぞうしんほう

日本大百科全書(ニッポニカ)「健康増進法」の解説

健康増進法
けんこうぞうしんほう

厚生省(現、厚生労働省)が2000年(平成12)に制定した「21世紀における国民健康づくり運動」(「健康日本21」)を具体化する法律で、2002年8月に公布され、2003年5月から施行された。平成14年法律第103号。医療制度改革一環で、廃止された栄養改善法の内容も含んでいる。目的は、高齢化社会に対応した国民の健康増進策の基本を決め、国民保健の向上を図る、と定めている。法律の対象は国民と、健康増進事業実施者。全部で39条の短い法律であるが、その2条で、国民は生活習慣の重要性を理解し、生涯にわたって健康増進に努めなければならないとしている。一方の健康増進事業実施者は、さまざまな関係法でかかわってくる事業者で、国や地方自治体のほか、健康保険組合や共済組合、給食や健康診断などを実施する業者も含まれる。おもな内容は、
(1)国や都道府県はそれぞれ健康増進につながる方策を企画・実施し、また啓発活動を行う必要がある
(2)市町村などは健康相談を実施したり、健康診断の結果を自己管理がしやすい健康手帳などの形に標準化する
(3)国は国民栄養調査の調査範囲を広げたり、栄養表示をくわしく、正確にする
(4)特定給食施設には管理栄養士を置くことを求めたり、病人用などの特別用途食品販売業者などの規制を強化する
などである。

 2000年に制定された「健康日本21」では生活習慣病予防のため、9分野(栄養、運動、休養、たばこ、アルコール、歯、糖尿病、循環器病、がん)の改善目標を掲げていた。ただし、健康増進法で具体策として規定されたのは、たばこの受動喫煙だけで、残りの8分野は、国や自治体などによる実態調査や啓発活動、相談事業にとどまっている。受動喫煙防止を定めた25条は、学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、受動喫煙防止策を講じなければならないとしている。2003年4月末の都道府県への通達では、その他の施設として、バス、タクシー、駅、旅館、商店、金融機関、美術館など、ほとんどの施設が含まれるとし、全面禁煙できない場合は煙が漏れない喫煙場所を設ける完全分煙を求めている。本法の施行により2003年5月から関東の私鉄10社が全駅を、日本道路公団は同公団管理の高速道路サービスエリアの原則禁煙に踏み切ったほか、4月ごろから一部自治体が施設の禁煙を実施、学校の全面禁煙なども続々と出ている。

 2018年7月に「健康増進法の一部を改正する法律」(平成30年法律第78号)が成立し、受動喫煙対策が強化された。これにより多くの者が利用する施設のうち、学校、病院、児童福祉施設などや、行政機関では2019年(令和1)7月1日から原則敷地内禁煙、屋内は完全禁煙、旅客運送事業自動車(バス、タクシーなど)の車内と旅客機内は完全禁煙とされた。ただし屋外で喫煙者以外が立ち入らない区画を設けるなど、受動喫煙防止措置をとった場合には喫煙場所を設置することができる。さらに2020年4月1日からは上記以外の施設(飲食店、職場、鉄道、ホテルのロビーなど)でも、屋内は原則禁止とされ、違反者には罰則が適用される。ただし客席面積が100平方メートル以下の既存の飲食店では経過的措置として喫煙が認められる。また、たばこの販売許可を得てたばこの対面販売を行うバーやスナックなど、喫煙を主目的とする施設でも喫煙が認められる。法律の施行後に新設される客席面積が100平方メートル、あるいは資本金が5000万円を超える飲食店では、飲食不可の喫煙専用室を設けることができる。

[田辺 功]

『健康増進法研究会監修『速報健康増進法』(2002・中央法規出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「健康増進法」の解説

健康増進法
けんこうぞうしんほう

平成 14年法律 103号。国民への栄養改善や健康の維持・増進をはかることを目的として厚生労働省が 2000年3月に開始した「21世紀における国民健康づくり運動 (略称・健康日本 21) 」の裏づけ策として制定された。医療制度改革の一環でもあり,廃止された栄養改善法 (昭和 27年法律 248号) の内容をも含む。もっとも「健康日本 21」で生活習慣病予防策として掲げられていた9項目のうち,法律に具体的施策として盛り込まれたのは受動喫煙の防止のみで,他は国や自治体などによる実態調査や啓発活動にとどまっている。しかし 2003年のこの法律の施行により私鉄,JRの駅など公共の場での全面禁煙が進んだ。

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デジタル大辞泉「健康増進法」の解説

けんこうぞうしん‐ほう〔ケンカウゾウシンハフ〕【健康増進法】

生活習慣に関する知識の普及と、国民の健康増進を図る法律。健康維持を国民の義務とし、また、受動喫煙の防止や特定保健用食品などに関する条項も盛り込まれている。平成15年(2003)5月施行。
[補説]令和2年(2020)4月から、都道府県知事命令に違反して、禁煙場所で喫煙した個人には30万円、禁煙場所に灰皿などの喫煙器具等を設置した施設管理者には50万円の過料が科される。

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