先天性水頭症

内科学 第10版 「先天性水頭症」の解説

先天性水頭症(先天奇形)

(1)先天性水頭症(congenital hydrocephalus)(図15-13-1)
病因
 脳室内脈絡叢で産生された髄液は,第3脳室,中脳水道,第4脳室を通過し,最終的には脳表のくも膜顆粒で吸収される循環を行っている.髄液循環の通過障害による非交通性水頭症と,吸収障害あるいは髄液産生過多による交通性水頭症に分類される.小児の水頭症の過半数は,先天性であり,最近では胎児エコーにて脳室拡大を指摘され診断される例も多くなってきている(表15-13-1).
臨床症状
 胎児期には胎児超音波にて頭囲拡大と脳室拡大を認める.出生後は頭囲拡大と大泉門膨隆,頭蓋骨縫合の開大,頭皮静脈の拡張,落陽現象(下方への間欠的な眼球運動)を認める.頭蓋骨縫合癒合後は,頭蓋内圧亢進による哺乳力低下,不機嫌,嘔吐,眼球運動障害(外転運動障害),視力障害などを呈する.
検査成績
 頭部画像検査では,非交通性水頭症では,通過障害の部位より頭側の脳室の拡大を認める.中脳水道狭窄は,先天的な狭窄あるいは出血炎症などによる二次的な狭窄部位となることが多いが,第3脳室が前下方に拡張し,両側の側脳室も拡大している.側脳室の前角部では,脳実質への脳脊髄液の染み出し(periventricular “halo”)を認める.交通性水頭症では,脳室系とともに髄膜下腔の拡大も認める.こうした所見とともに,Dandy-Walker症候群などの原因となる奇形があれば,それぞれの特徴的な所見を認める.
治療
 基本的には外科的に脳室-腹腔シャント手術や第3脳室底開窓術などによる.髄液の産生を抑制するアセタゾラミドが一時的な効果を期待して使用される場合がある.[岡 明]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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