改訂新版 世界大百科事典 「公害物質」の意味・わかりやすい解説
公害物質 (こうがいぶっしつ)
環境基本法2条では,事業活動その他の人の活動によって生ずる相当広範囲にわたる大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染,騒音,振動,地盤の沈下,悪臭によって人の健康または生活環境にかかわる被害が生ずることを公害と規定しているが,公害の原因のうち,騒音,振動,地盤の沈下を除く,大気,水質,土壌の汚染および悪臭の原因物質を公害物質と呼んでいる。大気汚染物質は,大気汚染防止法によって,ばい煙,粉じん,自動車排出ガスおよび特定物質が指定されている。ばい煙では,硫黄酸化物,カドミウム,塩素,フッ化水素,鉛,その他の物質が,自動車排出ガスでは,一酸化炭素,炭化水素,鉛化合物,窒素酸化物,粒子状物質が指定されている。これらのうち,二酸化硫黄,二酸化窒素,一酸化炭素,粒子状物質については環境基準が決められている。特定物質は,施設の故障,破損などの事故により大気中に多量に排出された場合に必要な措置をとるべき物質であり,表1に掲げる28種が指定されている。水質汚濁防止法では人の健康にかかわる物質として表2に掲げるものを水質汚濁物質として指定し,それぞれについて環境基準を設けている。悪臭防止法には表3に掲げるものなど悪臭物質として指定されている。土壌汚染防止法では,土壌中に蓄積して,農作物などに吸収,蓄積され,これを人が摂取して健康に影響を及ぼすおそれのあるものとして,カドミウム,銅およびヒ素の化合物が指定されている。また農薬取締法は健康や生活環境の保全に悪影響を及ぼすおそれのある農薬として表4に掲げるものを指定し,使用を禁止または制限している。
執筆者:中島 泰知
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報