共存同衆(読み)きょうそんどうしゅう

改訂新版 世界大百科事典 「共存同衆」の意味・わかりやすい解説

共存同衆 (きょうそんどうしゅう)

明治初期のヨーロッパ留学帰朝者を中心とする,会員切磋琢磨(せつさたくま)と国民啓蒙を目的とした結社。1874年9月,小野梓提唱により発足した。共存同衆の名は小野命名によるが,共存は社会を,同衆は協会を意味するとも,mutual associationの意ともいう。その起源は1873年9月にロンドンの日本人留学生によって結成された日本学生会にある。日本学生会の中心人物は小野と馬場辰猪で,外国にあっても出身藩意識から抜けだせずに封建時代の感情を強くもっている日本人留学生に,国際社会における日本の現状を認識させ,親睦相互扶助を通して留学生としての使命を自覚させるのがその目的であった。小野の帰国によって同趣旨の会が日本にもできた。共存同衆は月2回(10,25日)の常会をもち,75年1月より《共存雑誌》を発刊した(1879年3月から週刊となる。全69号)。77年2月には共存衆館と名づけた会館を建設し,79年には共存文庫(図書館)をはじめた。しかし80年の集会条例により大打撃を受け,政治的世界から退いて社交クラブとなった。また79年には〈私擬憲法意見〉を起草した(私擬憲法)。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「共存同衆」の解説

共存同衆
きょうぞんどうしゅう

明治初期の学術結社。イギリス留学から帰った小野梓(あずさ)が1874年(明治7)9月に東京で結成。日本の独立と国民統一のための知識人相互の学術研鑽・人民の啓蒙を目的とした。衆員はイギリス留学を終えた若い知識人たちで,官吏が多かった。定期的に討論会演説会を催し,75年からは「共存雑誌」を刊行して衆員の論説を掲載し,東京の民権運動一翼を担った。80年代に入り主要な衆員の個別活動が強まり衰退,親睦団体化した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「共存同衆」の意味・わかりやすい解説

共存同衆
きょうぞんどうしゅう

1874年に結成された学者たちの思想団体。馬場辰猪がロンドン留学中につくった留学生の親睦機関をもとに,彼が帰国後,小野梓らとはかって結成した。この会員の建議をもとに,讒謗律 (ざんぼうりつ) が制定された。

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世界大百科事典(旧版)内の共存同衆の言及

【小野梓】より

…1869年,昌平黌に学ぶ。70年上海旅行でアジアの近代化の必要を痛感,米英留学で法律学を学び帰国後共存同衆を結成,金子堅太郎,鳩山和夫らと自由主義,立憲思想の啓蒙につとめる一方,近代法の研究を行う。官途に就くが明治14年の政変で大隈重信に殉じて下野,東京大学の学生を中心とする鷗渡会を率いて立憲改進党に参加,大隈のブレーンとして活躍した。…

【讒謗律】より

…〈讒謗〉とは,名誉毀損(きそん)を意味する〈讒毀〉と侮辱を意味する〈誹謗(ひぼう)〉をまとめた言葉(1条)。近代国家には個人の名誉保護の立法が必要だとした小野梓らのイギリス法研究グループ〈共存同衆〉の提出した建議を受けて,制定されたものとされる。しかし讒謗律には天皇(2条),皇族(3条),官吏(4条)に対する讒謗罪がまず規定され,次いで5条で一般私人に対する讒謗罪が規定されているものの刑罰は前3者より軽微となっていた。…

【地方結社】より

…慶応義塾関係者が結成した社交団体である交詢社(1880年創立,福沢諭吉・矢野文雄(竜渓)・小幡篤次郎ら,創立時会員1800余)や《東京横浜毎日新聞》を拠点として関東一円から東北地方南部にまで支社の網をはった嚶鳴社(おうめいしや)(1873年法律講習会として創立,沼間守一・肥塚竜・島田三郎ら,社員1000余)は,当時最大の知識人集団であり,地方政治運動の喚起に大きな力をもった。このほか留学帰朝者が組織した共存同衆(1874年創立,小野梓・馬場辰猪ら)や,中江兆民の仏学塾(1874年創立)は民権思想の普及に貢献した。また1881年に結成された国友会(末広重恭・馬場辰猪・大石正巳ら)や鷗渡会(小野梓・高田早苗ら),82年に慶応義塾関係者の組織した東洋議政会(矢野文雄・藤田茂吉・犬養毅ら,《郵便報知新聞》による)などは政府と民権派の対立激化の時期の産物であり,士族的・豪農的諸結社や嚶鳴社とともに政党(自由党,立憲改進党)結成の直接の基盤となった。…

※「共存同衆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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