内部被曝(読み)ないぶひばく

知恵蔵「内部被曝」の解説

内部被曝

体内に取り込んだ放射性物質から放射線が出て被曝すること。放射性物質を含む大気や粉じんを呼吸によって吸い込んだり、そうした粉じんが鼻やのどの粘膜に付いたりすることで起こるほか、野菜や肉・魚などに付いたり含まれているものを飲食することでも起こる。
体内に取り込まれた放射性物質の一部は尿で排出されるが、排出されなかったものは、体の組織に沈着・停留して放射線を出し続ける。身体は飛距離の短いアルファ線やベータ線の影響を継続的に受け続けることになる点が、外部被曝と異なる。体内に留まった放射性物質は、周囲の組織のデオキシリボ核酸(DNA)を損傷してがんなどを発症するリスクを高める。
核爆弾の爆発や原子力発電所の事故で飛散する放射性物質には、ヨウ素、セシウムプルトニウムストロンチウム等がある。身体のどのような組織に沈着しやすいかは、放射性物質によって異なる。例えばヨウ素は甲状腺に集まりやすく、甲状腺の働きが活発な乳幼児や若年者は特に、放射性ヨウ素によって甲状腺障害を生じるリスクが高い。また、ストロンチウムはカルシウムと置換して骨に沈着しやすいこと、セシウムは生殖腺に、プルトニウムはなどに停留しやすいことが知られている。
体内に取り込まれた場合にも、各放射性物質の物理的な半減期は変わらないが、代謝によって尿などの形で排出される量を見込んで、体内の量が半減するまでの期間を生物学的半減期という。ヨウ素131の物理的半減期は8日だが、いったん体内に取り込まれると生物学的半減期はおよそ120日となる。また、プルトニウムの物理的半減期は2万4000年だが、生物学的半減期は約50年とされている。
内部被曝を予防するためには、被曝の可能性のある場所では防塵(ぼうじん)と放射線防護の装備をすることが基本である。ヨウ素については、被曝が予想される際にあらかじめ安定ヨウ素剤を服用しておくのが有効。
内部被曝量は、ホールボディーカウンターという特殊な装置で測定した全身の放射線量から推計する。福島第一原子力発電所での事故においては、事故直後の作業に当たった2人が、6月初旬の時点で内部被曝量200ミリシーベルト以上と評価された。厚生労働省は、体内のプルトニウムなどを吸着して尿として排出させる点滴薬の承認作業を急いでおり、2011年7月には認可が下りる見通し。

(石川れい子  ライター / 2011年)

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日本大百科全書(ニッポニカ)「内部被曝」の解説

内部被曝
ないぶひばく
internal exposure

身体の内側から被曝すること。

 放射性物質からの放射線に曝露することを「放射線被曝」といい、身体の外からの被曝を「外部被曝」、身体の中に入った放射性物質からの被曝を「内部被曝」という。

 身体の中に放射性物質が入る例としては、空気中の放射性物質を呼吸によって吸い込むこと、放射性物質が含まれている食料品の飲食が主たる経路であるが、皮膚に付着した放射性物質が吸収される場合や、傷口などから放射性物質が入ることもある。また、検査・治療において放射性医薬品が投与されることもある。なお、日本人は通常の食事をとることで平均して年間約0.99マイクロシーベルト(mSv)の被曝をしている。

 なお、内部被曝のほうが外部被曝よりも危険であるという見方があるが、被曝線量が同じであれば、放射線の発生源が体外か体内かの違いであって、影響は同じである。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の4~5年後に小児の甲状腺(せん)がんが増加したことが知られているが、これは、放射性物質に汚染された牛乳や野菜などを食べ、とくに、ヨウ素131が甲状腺に取り込まれたことによる内部被曝がおもな原因と考えられている。そのため、内部被曝がより問題とされることになったが、重要なのは被曝線量であり、外部・内部を問わずできるだけ被曝を少なくすることが肝要である。

 原子力災害などで放射性物質の拡散が想定される場合、内部被曝を少なくするためには、(1)空間放射線量の高い場所から離れる、(2)放射性物質による汚染が懸念される食品や水の摂取を控える、(3)放射性物質に汚染されている服、靴などは着用せず、シャワーなどにより付着物を洗い流すようにする、などが必要である。

[安村誠司 2020年2月17日]

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デジタル大辞泉「内部被曝」の解説

ないぶ‐ひばく【内部被×曝】

体内に取り込まれた放射性物質による被曝。汚染された飲食物を経口摂取したり、放射性の粉塵を肺に吸い込んだりするほか、傷口から血液中に取り込まれることなどが考えられる。放射線の到達距離が短いα線β線人体に悪影響をもたらす。一方、人体表面からの被曝を外部被曝という。体内被曝体内照射。内照射。

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百科事典マイペディア「内部被曝」の解説

内部被曝【ないぶひばく】

被曝

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世界大百科事典内の内部被曝の言及

【放射線障害】より

… また,身体的障害出現の様相は,被曝した線量の大きさに左右されるばかりでなく,どのような状態で,どのような放射線による被曝を受けたかということによって,大きく変化する。そのような観点から,放射線の発生源(線源)が外部にある場合の被曝形式を外部被曝(体外被曝)と呼び,身体内に取り込まれた放射性物質によって,身体内部から被曝するような形式を内部被曝(体内被曝)と呼んで,その障害を分けて考えるほうが理解しやすい。外部被曝については,透過性の強いX線,γ線,中性子線が問題となり,α線やβ線のような透過力の弱い放射線は,皮膚障害以外は,重要な問題とならない。…

※「内部被曝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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