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経済表 けいざいひょうTableau économique

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

経済表
けいざいひょう
Tableau économique

フランスの経済学者で,重農学派の創始者 F.ケネー創案した図表。原表 (1758) ,略表 (62) ,範式 (67) の3種類から成る。社会構成を生産階級 (農業生産者) ,地主階級,不生産階級 (商工業者) とに分け,それらの間の流通を媒介とした社会的総資本の再生産過程を明確にし,表示しようとした最初の試みであった。特に範式は経済表の完成形態ともいわれるもので,その特徴の第1は社会的再生産が単純再生産であること,また当時フランスで進行していた縮小再生産の原因が何であり,どのようにすれば拡大再生産が可能であるかを明らかにしたこと,第2に地主の収入は生産階級から取得される租税だけであり,その額は生産階級の年々産出する剰余生産物と同額であることを明らかにしたことである。農業部門のみが剰余を生み出す生産的階級であるとする農業主義的誤謬を含んではいたものの,その後の K.マルクス再生産表式の定立,W.レオンティエフ産業連関表作成の際の先駆的形態となったという点で,経済学上大きな意義をもった。

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デジタル大辞泉の解説

けいざいひょう〔ケイザイヘウ〕【経済表】

《原題、〈フランス〉Tableau économique》重農学派の創始者ケネーの創案になる経済循環に関する図表。1758年刊。

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百科事典マイペディアの解説

経済表【けいざいひょう】

重農主義の祖ケネーが1758年に発表した経済循環(資本の再生産過程)を示す図表。農業のみが剰余を生むとの立場から国民を生産階級(農業生産者),不生産階級(商工業者),地主階級の3階級に分け,生産階級から地主への地代支払を起点に,農産物と工業製品との各階級への帰属と貨幣流通の結果,生産継続の条件が確保されることを示す。

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世界大百科事典 第2版の解説

けいざいひょう【経済表 tableau économique[フランス]】

18世紀中葉にフランスの重農主義経済学者F.ケネーがくふうした経済循環の図式で,のちにK.マルクスの再生産表式やW.レオンチエフ産業連関表の基となった。表1がその範式formuleで,デュポン・ド・ヌムール編《フィジオクラシー》(1767)に〈経済表の分析〉とともに収められている。いわゆる原表grand tableau(zigzag)は1758年(初版)から59年(第2,3版)へかけてごく少部数印刷されたが,それは,ジグザグ表ともいわれるように,地主階級(国王,貴族,僧侶を含む)の支出する〈かね〉が,他の2階級すなわち生産的階級(農民),不生産的階級(商人・職人)の間を1生産期間=1年間に転々と行き交うありさまを描写したものであった。

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大辞林 第三版の解説

けいざいひょう【経済表】

重農学派の始祖ケネーが描いた、経済体系の循環・再生産を表す図表。1758年刊。マルクスの再生産表式やレオンチェフの産業連関表の発想の源となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

経済表
けいざいひょう
tableau conomiqueフランス語

フランスの重農主義経済学者であり医者でもあったF・ケネーが、人体の血液循環を模してつくった経済循環表。経済表には各種の版があり、1758年に発表されたものを「原表」、V・R・M・ミラボーの『農業哲学』(1763)に掲載されたものを「略表」、ケネーの論文「経済表の分析」(1766)が1767年にデュポン・ド・ヌムール編『フィジオクラシー』に再録された際に付加されたものを「範式」という。それぞれ基礎表と数種の応用表からなる。
 ケネーは経済表のなかで、フランスの階級構成を、地主階級(僧侶(そうりょ)、貴族、土地所有者)、生産階級(借地農民)、不生産階級(商工業者)の3階級に分類した。地主階級は生産階級に土地を貸して地代を受け取り、それで生産階級から食料を、不生産階級から工業生産物を購入する。生産階級は地主階級から土地を借りて地代を払い、農産物を生産して、地主階級に食料を、不生産階級に食料と原材料を供給し、不生産階級から工業生産物を購入する。不生産階級は生産階級から食料と原材料を購入し、工業生産物を生産して地主階級と生産階級に供給する。経済表は、このような三つの階級間における生産物と貨幣の流通と分配の過程を線で示したものである。ここでケネーは、工業生産物は商工業者の生活費と原材料の合計に等しいので、商工業者の活動によっては剰余生産物は生まれないとして、彼らを不生産階級とみなし、農業だけが剰余生産物を生み出すと考え、農民を生産階級とよんだ。そしてその剰余価値を地代として規定した。ケネーはこの経済表で、農業の発展による国富の増進と、地主への単一税の賦課という税制改革との理論的根拠を明らかにしているのである。
 のちに、マルクスはケネーの経済表の着想を借りて再生産表式を作成し、さらにW・レオンチェフはこれらを参考にして、より現実的な産業連関表を完成した。マルクスの再生産表式もレオンチェフの産業連関表も一種の経済表といえよう。[畑中康一]
『越村信三郎著『ケネー「経済表」研究』(1947・東洋経済新報社) ▽菱山泉著『重農学説と「経済表」の研究』(1962・有信堂)』

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世界大百科事典内の経済表の言及

【経済学説史】より

…重農主義は自然法思想に基づき,自由取引を提唱し,農業を重視した。F.ケネー経済表(1758)は,経済循環に関する最初の理論モデルである。しかし重農主義においては,土地だけが純生産物を生むと考えられ,前貸しとしての資本の概念は確立されていたが,恒常的所得としての利潤の概念は存在しなかった。…

【経済循環】より

…彼の試みは,その後の経済学を貫く思潮の一つとなり,現代にまで受け継がれている。とりわけ経済表として1枚の図表に経済活動の全貌を集約して表現しようとした彼の着想は,マルクスの再生産表式やレオンチエフの産業連関表として結実し,経済学上有力な分析用具を提供する結果となった。 現代の国民経済の循環構造を具体的にとらえる手法としては,上記の産業連関表のほかに,国民経済計算資金循環表(マネー・フロー表)があげられる。…

【ケネー】より

…重農主義の創始者。〈経済表〉(1758)の発表により,後世の経済学に大きな影響を与えた。パリの近郊メレに生まれ,パリで医学を修め,外科医学者としても著名で,この分野の著作も多数にのぼる。…

【三大階級】より

…18世紀の重農主義者F.ケネーは,農業を中心とする当時の社会が生産階級(農民),地主・支配階級,不生産階級(商工業者)の3階級によって構成されるとみなし,それらの間の取引を分析することによって生産物および所得の社会的循環を解明する《経済表》を著した。全経済体系の活動を諸階級間の相互連関として包括的にとらえるというこの発想は,その後K.マルクスの再生産表式,L.ワルラスの一般均衡理論,W.W.レオンチエフの産業連関分析(〈産業連関表〉の項参照)へと受けつがれていった。…

【重農主義】より

…これらの政策的主張を前提にし,重農学派とりわけケネーは,資本制的大農経営を基礎とする社会構造を政治算術的方法によって実証的に分析し,それを自然的秩序として描き出そうとした。その経済学体系は,社会の構成を地主階級,生産階級である農業者階級,不生産階級である商工業者階級に三分し,農業だけが剰余価値つまり〈純生産物〉を生みだし,それが地主階級に地代として支払われるという構想のもとに,〈経済表〉(1758)として総括的に示された。
[業績と限界]
 こうした分析は,まず第1にアンシャン・レジーム期のフランスの社会構造を対象に,その経済循環を独自な規則的秩序をもったものとして,全体として把握したものである。…

※「経済表」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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