デジタル大辞泉
「再販売価格維持契約」の意味・読み・例文・類語
さいはんばいかかくいじ‐けいやく〔サイハンバイカカクヰヂ‐〕【再販売価格維持契約】
製造業者などがその商品を販売する卸売業者や小売業者に対して顧客への販売価格を指定し、これを維持させる契約。再販契約。再販制。
[補説]日本では、著作物である書籍・雑誌・新聞・音楽ソフトの4品目が対象とされる。再販売価格を維持する行為は、独占禁止法で原則として禁止されているが、文化の振興・普及の観点から、これらの著作物は例外として認められている。かつては公正取引委員会によって指定された商品にも適用し、医薬品などが対象とされたが、現在は廃止されている。なお、タバコについては、たばこ事業法の規定により、財務大臣の認可を受けた小売定価以外での販売が禁止されている。
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精選版 日本国語大辞典
「再販売価格維持契約」の意味・読み・例文・類語
さいはんばいかかくいじ‐けいやく‥カカクヰヂ‥【再販売価格維持契約】
- 〘 名詞 〙 卸売業者や小売業者が、あらかじめ生産業者から指定された価格(定価)を遵守して販売するという契約。特に公正取引委員会が指定する商品についてだけに認められている。再販契約。
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再販売価格維持契約 (さいはんばいかかくいじけいやく)
商品の流通過程において,その商品の所有権がメーカーから卸売業者を経て小売業者に移転していく場合に,すでにその商品の所有権を他に移転した事業者(例えばメーカー)が,所有権を有している事業者の,当該商品の販売価格(例えば卸売業者の小売業者に対する販売価格や小売業者の消費者に対する販売価格)を決定し,それを維持させることを内容とする契約。メーカーがブランド商品について,ブランド・イメージの確立を図ったり,小売業者に対して競争メーカーよりも多額のマージンを保証して自己の商品の店頭での推奨販売をさせるための手段として用いられる。流通系列化の代表的な行為類型である。
1953年の独占禁止法の改正の際に,〈不公正な取引方法〉の禁止に関する規定が設けられ,この種の契約が公正な競争を阻害する場合には,〈不当な拘束条件付き取引〉に該当すると理解されることとなったが,同時に,不当廉売やおとり販売等の不当な競争を防止し,小売業者の利益保護を図ることを目的として,公正取引委員会が指定した商品と著作物についての再販売価格維持契約を独占禁止法の適用除外とする規定も設けられた(24条の2-1項,4項)。ただし,公正取引委員会の指定を得るためには,当該商品が一般消費者によって日常消費されるものであり,当該商品について自由な競争が行われているという条件が満たされねばならない。また著作物については24条の2-4項の規定から直接に適用除外が認められると解されるため,公正取引委員会の指定は不要であり,届出も不要と解される。
日本においてはアメリカ等と異なり,昭和30年代後半に入るまでは,このような制度ができた後も,化粧品,染毛料,歯磨,家庭用セッケン,医薬品,雑酒,キャラメル,写真機等の一部の業界と出版物でこれが利用されたのみで,社会的にさほど大きな問題となることもなかった。ところが1962年以降,日本のメーカーが国内での流通経路を整備し,マーケッティングの体制を充実させるのに平行して適用除外制度の利用が急増し,同時に,指定を受けずに行ういわゆるヤミ再販も活発になった。昭和40年代に入って,消費者物価の上昇に対する物価政策が政府の大きな課題となるにつれ,独占禁止法によるこの種の契約の規制が問題とされることとなった。
諸外国でも,伝統的にこの種の契約を違法とする例が多く,また結果において,小売業者の段階での同一ブランド商品の価格競争を消滅するために,カルテル類似行為として評価されやすいこと等もあって,1975年には最高裁が粉ミルクのヤミ再販を〈不当な拘束条件付き取引〉で独占禁止法違反とする判決を下した。その後,82年の〈不公正な取引方法〉の一般指定の改正によって,ヤミ再販を原則的に違法な行為として扱うようになった。
このような流れの中で,公正取引委員会も指定による適用除外を縮小してきたが,著作物についての再販売価格維持制度をどのようにするかについてはさまざまな見解があり,1996年から97年にかけての独占禁止法の適用除外制度の全面的な見直しの際に,非常に大きな論点となった。それに先立って,公正取引委員会はレコードやCDについては,一定の条件で法定再販からはずす取扱いをして部分的な著作物の再販制度の適用除外の修正を行っていた。しかし,適用除外の全面的廃止をめぐっては,新聞社を筆頭にして,出版業界からの文化的理由による再販制度維持の動きと,競争政策としての再販制度の廃止を求める意見とが鋭く対立し,いまだにその結論は出されていない。
執筆者:来生 新
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再販売価格維持契約
さいはんばいかかくいじけいやく
resale-price maintenance contract
生産者と流通業者との間で生産者が設定した転売(卸売りと小売り)価格を流通業者が維持することを定めた契約のこと。略して再販制、再販契約ともいう。再販には、適用期間を限定するか否かによる時限再販か永久再販、適用商品範囲による部分再販か包括再販、値引きを許容するか否かによる値幅再販か確定再販の別がある。このような契約が結ばれる目的は、商品の乱売が行われると、生産者にとっては商品の信用が失われ、流通業者にとっては必要なマージン(利幅)が確保できなくなり、その結果として消費者にとっては商品の説明やサービスが十分に受けられなくなるなど、関係者すべての利益が損なわれる状態に陥ることを防止するという点にある。しかしその反面、現実には、生産者とくに強力な寡占企業が流通業者に定価の維持を強制して価格の下方硬直をもたらし、流通業者間の無用なサービス競争を生み出すなど、消費者に自由経済の恩恵を与えるうえで障害になることが多かった。このため、日本では、独占禁止法により原則的に禁止され、公正取引委員会の指定した品目についてのみ実施(指定再販)が認められてきた。指定の要件は、商品の品質の一様性の識別が容易にできること、その商品が一般消費者により日常使用されるものであること、その商品について自由な競争が行われていること、再販制を実施しても一般消費者の利益が害されないこと、などである。日本では医薬品、化粧品などの商標品について実施されてきたが1993年(平成5)に廃止され、1996年には指定再販そのものが廃止された。ただし例外として、著作物(書籍、雑誌、新聞、音楽ソフト)については、当面維持されるとされた。
[森本三男]
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「再販売価格維持契約」の意味・わかりやすい解説
再販売価格維持契約【さいはんばいかかくいじけいやく】
生産者や販売業者が,自己の手を離れた後における商品の転売価格の決定・維持を目的として,販売の相手方である事業者と締結する契約の総称。この契約による販売制度を再販制度と略称する。独占禁止法は公正競争を制限するものとして原則として禁止しているが,公正取引委員会が指定する商品で,その品質が一様であることを容易に識別できるもの(書籍,新聞など)については,適法と認めている(法定再販,指定再販)。ただし,これによって一般消費者の利益が不当に害される場合,および生産者の意に反して契約が締結される場合には違法となる。しかし,価格の硬直など多くの問題点を有するため,見直しが検討されており,著作物であっても,出版社が自由価格とすることができる。1992年から化粧品,医薬品が対象外とされた。現在,著作物についても法定再販の対象外とするかどうかについて激しい論争が行われている。 なお,許可外のヤミ再販は多く,有力メーカーによる安売り小売店への出荷停止も問題となる。
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再販売価格維持契約
さいはんばいかかくいじけいやく
商品が次の取引段階,あるいはその次の取引段階において販売される価格を指定し,それを維持させることを内容として締結する契約であって,小売価格が拘束されるところに特徴がある。この行為は取引の相手方を不当に拘束する行為とされ,独占禁止法によって原則的に禁止されている (独占禁止法2条9項4号,19) 。再販売価格を維持しようとする前者が,市場において優越的,または支配的な力をもつ場合に,その力を背景として具体化することのできる行為である。この再販売価格維持行為については,1953年の独占禁止法改正によって一定の商標品について独占禁止法の適用を除外し,それを容認する制度が設けられている。商標品であって一般消費者には日常使用されており,商品について自由な競争が行われていることを前提とし,一般消費者の利益を不当に害することとならないことなどを前提として,公正取引委員会が指定した商品について,再販売価格維持行為が認められる。この指定商品は 92年の見直しで著作物のほか化粧品および大衆医薬品約 30品目のみとなったが,今後は化粧品・医薬品については全廃,著作物についても明確な区分を設ける方向で検討が進められている。
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世界大百科事典(旧版)内の再販売価格維持契約の言及
【出版】より
…
[再販制]
日本においては,出版物はどこの書店でも定価で売られている。値引きして売ってはならないという契約([再販売価格維持契約])を,出版社,取次店,小売書店の3者が結んでいるためである。このような再販売価格の維持(定価販売)を申し合わせることは,〈自由競争の原理〉に背くため消費者の利益にならない,ということから,通常は独占禁止法によって禁止されている。…
※「再販売価格維持契約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」