改訂新版 世界大百科事典 「冬祭」の意味・わかりやすい解説
冬祭 (ふゆまつり)
立冬から立春までの11月初旬から2月初旬までおもに11,12,1月に行われる神事祭礼をいう。祭りは本来季節を先導すべき行事であるから,実際の季節感覚に先行する。古代律令制下の神祇官所祭の四時祭では仲冬つまり旧11月の相嘗祭(あいなめまつり)と鎮魂(たましずめ)(鎮魂祭(ちんこんさい))と新嘗祭(にいなめさい)の三祭,季冬つまり旧12月の月次(つきなみ),鎮火(ほしずめ)(鎮火祭(ちんかさい)),道饗(みちあえ)の三祭が冬祭にあたる。相嘗は諸国の神々へ,新嘗は皇祖神へ新穀を供する収穫感謝の祭りであり,鎮魂は天皇霊を補強する神事であるが,季冬の三祭は季夏旧6月にも執行される社会安泰祈願の祭りである。民間では古来10月の物忌(ものいみ)を経た霜月(旧11月)に本格的な収穫感謝の祭りが集中したが,近来は多くこれが収穫直後の秋祭に移行したため,冬祭としては鎮魂祭のモティーフを残す神楽(かぐら)や湯立(ゆたて)神事を中心とする山村地帯,たとえば奥三河の花祭(はなまつり),中国山地の備中・大元(おおもと)神楽,九州山地の霜月神楽などの祭りが中心をなす。また冬祭も春近くなると,予祝的性格が強くなる傾向がある。
執筆者:薗田 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報