あい‐んべ あひ‥【相嘗】
〘名〙 (「
あいにえ(相嘗)」の変化した語。「あひむべ」と表記) 古代、一一月の卯
(う)の日に、その年の
新穀を諸神に供え、諸神と
天皇とが共に
饗宴を行なう形の祭。
山城、大和、
河内、
摂津、
紀伊の諸社に、
幣帛(へいはく)を奉る祭儀。あいなめ。あいにえ。
※狭衣物語(1069‐77頃か)三「十一月(しもつき)にもなりぬれば、斎院のあひむへの程」
[語誌]「
日本書紀」に「相
新嘗」を「あひにへ」と訓むが、多く「相嘗」と表記し、「あひむへ」「あひんへ」「あひなめ」などと付訓されている。読みは「あいんべ」(「観智院本名義抄」「
名目鈔」は「あひむべ」)。「
伊呂波字類抄」「狭衣物語古活字本」には「あゑへ」「あやへ」とあるから、「あえんべ」「あやんべ」ともいったようである。
現行の「あいなめ」の訓は漢字表記に引かれたもので、「新嘗
(にひなめ)」「
大嘗(おほなめ)」などの
類推によるか。
あい‐にえ あひにへ【相嘗】
※
書紀(720)天武五年一〇月(北野本訓)「相新嘗
(アヒニヘ)の諸の
神祇に祭幣帛
(いはひのみてくらたてまつ)る」
あい‐なめ あひ‥【相嘗】
※
太平記(14C後)二四「
九月には〈略〉鎮花・三枝・相甞
(アヒナメ)・
鎮魂・
道饗の祭あり」
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相嘗 (あいなめ)
相饗(あいにえ)ともいう。嘗はなめる,ねぶる,味わうの意で,《日本書紀》などの新嘗(にいなめ)や大嘗祭の記事ではナフライとよまれており,転じて直会(なおらい)となる。したがって相嘗は直会と同じ意であり,神祭にさいして,神に神饌をささげ,それを司祭者・参加者がいただく神人共食の儀礼である。この相嘗を通じて神と人との親密さが加わり,神は人を守護することを保証し,人は神を敬い,祈願し,報謝する。この一体感を強め,確認することが祭りの本質である。したがって祭りの諸儀礼のなかで根幹をなすのが相嘗である。
→共食
執筆者:岩井 宏実
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相嘗【あいなめ】
相饗(あいにえ)ともいう。にえは神供(しんく)の意。共食により神人(しんじん)結合するとの信仰に基づく儀礼。神祇(じんぎ)に新穀を饗し,天皇の共食された祭が相嘗祭(旧11月)であるが,律令(りつりょう)制度の衰退とともに急速に衰えた。
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相嘗 (アイナメ)
学名:Hexagrammos otakii
動物。アイナメ科の海水魚
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の相嘗の言及
【共食】より
…共食には神と人との共食,人と人との共食がある。神と人との共食は,神に捧げた御食(みけ)(神饌)そのもの,もしくは同じものを調製し,祭りの司祭者・氏子が神前で[相嘗](あいなめ)すなわち直会(なおらい)をする。神と人とが同じ食物を味わうことによって,両者の親密を強め,生活安泰の保証を得ようとするものである。…
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