冶金炉(読み)やきんろ

改訂新版 世界大百科事典 「冶金炉」の意味・わかりやすい解説

冶金炉 (やきんろ)

冶金で使われる炉で,製錬する炉,溶解炉および加熱炉に大別される。金属の製錬には乾式法と湿式法とがあるが,高温で行われるのは乾式製錬であり,高炉,転炉,平炉,シャフト炉,流動層炉,反射炉,自溶炉などが使われている。これらは,炉内で還元反応などを行って,鉱石中の各種の金属含有化合物(酸化物,硫化物,金属間化合物など)から金属成分を分離するものであり,金属化合物や金属とガス,スラグの間で複雑な反応が行われる。このため,炉内の耐火物はスラグやガスと反応して操業に影響を与え,また不適切なものだと侵食を受ける。

 溶解炉は金属を溶解して鋳物またはインゴットをつくるための炉で,るつぼを使う場合には金属溶湯と熱源は直接には接触しない。しかし,るつぼ等は溶湯にさらされるため,内張りの耐火物には十分注意しなければならない。また,溶湯の表面にはフラックスを浮かべ,溶湯成分が適切に保たれるようにする。鋳鉄の溶解には,古くから,こしきキュポラが使われているが,現在はアーク炉,低周波誘導炉,高周波誘導炉も多く用いられる。鋳鋼は,ほとんどアーク炉で行われ,残りを転炉,高周波誘導炉が占めている。銅合金では,少量の溶解にはコークスあるいは重油燃焼によるるつぼ炉と低周波誘導炉と高周波誘導炉が,大量の溶解には重油燃焼による反射炉が用いられている。アルミニウム合金では,るつぼ炉,低周波誘導炉,反射炉が用いられる。電気抵抗炉はダイカスト等の溶湯の保持炉とされる。

 加熱炉は,焼入れ,焼きなまし,焼戻しなどの熱処理や,熱間加工のために加熱する炉で,熱源および加熱方式により多くの種類がある。一般には電気抵抗炉,燃焼炉などが用いられる。電気抵抗炉は抵抗体の種類により,それぞれが特徴をもっている。燃焼炉は直接加熱と間接加熱に分けられる。間接加熱の場合は燃焼ガスが加熱物に直接触れないので,雰囲気の加熱に用いられる。雰囲気に気をつけなければならない場合は塩浴炉,雰囲気炉,真空炉などが使われる。また,処理品の表面部分のみを加熱する目的で高周波誘導炉が使われ,いわゆる高周波焼入れに利用される。

 炉の内壁は,高温に耐え,前述したガスやスラグなどの溶湯に侵食されないよう,耐火煉瓦を積み上げ,モルタルで目張りをする。また,耐火物の裏張りには断熱材を用い,炉内の熱が炉外に放散するのを防ぐ。断熱材には,断熱煉瓦石綿,セラミックスファイバーなどが用いられている。
電気炉 →溶解
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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