鋳鉄を溶解する炉の一種で,最も広く用いられているもの。日本古来の〈こしき〉はその小型のものである。構造は図に示すように簡単で,立形円筒状の炉体の下部に出湯口,出滓口があり,その上部に空気を送る羽口,最上部に原材料である地金およびコークスの装入口がある。炉にある高さまでコークスをつめてから,一定の比率のコークスと地金および溶解補助剤として石灰石を交互に投入する。地金にはふつう銑鉄,鋼くず,鋳鉄製品の戻りくず(故銑)が用いられる。コークスの燃焼熱によって地金が下部から徐々に溶け,小さな玉となってコークスの間を落ちて下部の湯だまりにたまり,スラグはその上に浮く。一定量になったら出湯口から湯を取り出す。地金とコークスを上部から補給し,連続的に操業されている。キュポラの能力は最大100t/h程度である。現在では,低周波誘導炉や高周波誘導炉による溶解も行われるようになったが,熱源としてのコークスが安価であることから見直され,主流はやはりキュポラである。鋳鉄の溶解工程は単に地金の溶解だけでなく,目的の材質を得るための成分調整などの溶湯処理なども含むので,キュポラを溶解専用にし,成分の調節などが容易である低周波もしくは高周波誘導炉と組み合わせる二重溶解法が近年広く用いられてきている。
執筆者:梅田 高照
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鋳鉄鋳物を製造するための直立する鋳鉄溶解炉で、古くから用いられている。埼玉県川口市は鋳物工場の多い街として有名であるが、ここを舞台とした小説で映画化もされた『キューポラのある街』で一般にも親しまれている。
炉の構造は簡単で、鉄板を巻いて立型円筒形とし、内側に耐火れんがで裏張りする。炉底は開閉できるようにし、溶解終了後開いて炉内容物を落下させる。炉壁には下方から、溶融鋳鉄の取出し口、溶融滓(さい)の取出し口、燃焼用の空気吹込み口(羽口(はぐち))、原料地金や燃料コークスや造滓剤を投入する装入口などがついている。
炉底より羽口上のある高さまでコークスを詰め、その上に地金(銑鉄、鋼くず、鋳鉄くずなど)とコークス、造滓剤(石灰石)を一定の量比で交互に装入し、羽口から空気を送風機により送り込み、コークスを燃焼させて地金を溶解し、炉底近くの取出し口から溶融鋳鉄を取り出して取鍋(とりべ)に受け、これを鋳型まで運び鋳造する。溶解能力は1時間当りの溶解重量で示され、炉の大小によって小は1トンから大は25トン程度のものまである。工芸品工場などでは、粘土でつくった樽(たる)状の円筒を3段くらい重ねて「こしき」と称して鋳鉄溶解炉としている。キュポラの名もラテン語の樽を意味するcupaに発するといわれる。現在では低周波誘導電気炉が鋳鉄溶解に広く用いられるようになったが、依然としてキュポラも広く用いられている。
[井川克也]
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…(6)鋳込金属の溶解 よい溶湯にすることは鋳物製造の第一条件である。溶解には,るつぼ炉,電気炉(アーク炉,高周波誘導炉,低周波誘導炉など),キュポラ,反射炉などが用いられる。溶解した溶湯は取鍋(とりなべ)に移される。…
※「キュポラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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