静岡県静岡市清水区(しみずく)由比(ゆい)地区と清水区興津(おきつ)地区との間にある峠。薩埵山(244メートル)の山地が急傾斜で駿河(するが)湾に面する岫崎(くきがさき)とよばれる地点を越える峠で、東海道の難所であるとともに名勝地でもあった。ここを通過するルートは、上道、中道、下道などとよばれ、峠道と磯道(いそみち)との変遷があった。波打ち際を通っていた道は、明暦(めいれき)年間(1655~1658)の朝鮮からの使節来訪の際に峠道が整備されて移動したが、1854年(安政1)の大地震によって海岸が隆起したあとは海岸道に移っている。現在も東海道本線、国道1号、東名高速道路がほぼ並行して通過する。1568年(永禄11)の武田信玄(しんげん)と今川氏真(うじざね)との合戦をはじめとする古戦場としても知られる。峠名は、付近の漁師の網にかかった菩提(ぼだい)薩埵(菩薩)を祀(まつ)ったことによる。由比駅から徒歩1時間。展望台や休憩所を備えたハイキングコースがつくられている。
[北川光雄]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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