出汁(読み)だしじる

精選版 日本国語大辞典 「出汁」の意味・読み・例文・類語

だし‐じる【出汁】

  1. 〘 名詞 〙 煮出した汁。鰹節(かつおぶし)昆布椎茸(しいたけ)などを煮出した汁で、汁ものや煮ものなどに用いる。にだし。だし。
    1. [初出の実例]「だし汁の仕様」(出典:当流節用料理大全(1714))

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改訂新版 世界大百科事典 「出汁」の意味・わかりやすい解説

出汁 (だし)

煮出汁(にだしじる)の略で,だし汁とも呼ぶ。動植物食品の旨味うまみ)成分を水に溶出させたもので,塩,みそ,しょうゆ,酢,みりん,砂糖などの調味料と合わせ用いて,料理の味を向上させる役割をもつ。また,すでに調味料を加えたそばのつけ汁やなべ料理の割下(わりした)をこの名で呼ぶこともある。日本料理のだしの材料としては鰹節(かつおぶし)とコンブが最も多く用いられるが,鰹節の旨味の主成分はイノシン酸ナトリウム,コンブのそれはグルタミン酸ナトリウムである。また,シイタケのそれはグアニル酸ナトリウムであるという。だし汁の語が見られるようになるのは鎌倉後期ごろの成立とされる《厨事類記》あたりからであるが,実質的には古くから堅魚煎汁(かつおいろり)などが使用されていた。堅魚煎汁は養老賦役令に見えるが,カツオを煮て〈煮堅魚〉をつくるさいのゆで汁を煮つめたものだったようである。現在だしをとる材料としては,動物性のものでは鰹節,サバ節などのほか,イワシなどの煮干し,ハゼ,キス,フナなどの焼干し,魚のあら,貝類の素干し,するめ,ニワトリのがら,ウシ,ブタの肉や骨などがあり,植物性のものではコンブ,干しシイタケ,かんぴょうなどが用いられる。植物性の材料のみを用いてとるだしは精進だしと呼ばれ,《料理物語》(1643)では,かんぴょう,コンブ,干しタデ,もち米(袋に入れて),干しカブラ,干しダイコンなどを取り合わせて使うとしている。
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百科事典マイペディア 「出汁」の意味・わかりやすい解説

出汁【だし】

煮出汁(にだしじる)のこと。料理にうまみを添えるものを水に溶出させたもの。植物性では精進出汁といい,コンブ,干しシイタケ,かんぴょうなどから,動物性ではかつお節,さば節,干し魚介,鳥がらなどから出汁をとる。日本料理では,かつお節とコンブの併用を重んじ,煮立たせずにとった一番出汁は最も上等で吸物とし,煮立たせてとる二番出汁は煮物みそ汁など用途が広い。惣菜(そうざい)用には一般に小イワシの煮干出汁が用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の出汁の言及

【日本料理】より

…日本の風土と社会の中で形成されてきた料理。広義には日本人が食べてきた料理ということができるが,ことさらに日本料理という場合は,洋風,中国風などの料理に対して,〈日本特有の〉とか,〈伝統的な〉といった性格をもつものとしての呼称である。その狭義の日本料理は,世界的にみてかなり特異な性格のものであり,本項目は主としてその性格形成の過程とその特徴について略述する。日本料理の構成要素である個々の食品などについてはそれらの各項目を,また,世界の中での日本料理のありようを確かめるためには,人類の食生活の諸形態の分析解明を試みた〈食事〉〈料理〉〈肉食〉〈宴会〉などの諸項目を参照されたい。…

※「出汁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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