刀自(読み)トジ

  • ▽刀自
  • とうじ

デジタル大辞泉の解説

《「戸主(とぬし)」の意で、「刀自」は当て字
年輩の女性を敬愛の気持ちを込めて呼ぶ称。名前の下に付けて敬称としても用いる。
一家の主婦。
「からたちの茨(うばら)刈り除(そ)け倉建てむ屎(くそ)遠くまれ櫛(くし)造る―」〈・三八三二〉
宮中の御厨子所(みずしどころ)・台盤所(だいばんどころ)・内侍所(ないしどころ)などで雑役を勤めた女官。
「台盤所の―といふ者の」〈・一三八〉
貴族の家に仕えて家事を扱う女性。
「宮々の―」〈栄花・わかばえ〉

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大辞林 第三版の解説

「とじ(刀自)」の転。
戸主とぬしの意。刀自は当て字
一家の主婦。いえとじ。 が子の-を/万葉集 723
老女の尊称。とうじ。 いませ母-面変はりせず/万葉集 4342
他家に仕えて雑役をする女。 宮々の-・をさめにても/栄花 若生え
宮中の台盤所・御厨子所みずしどころ・内侍所などに仕えた下級の女官。 台盤所の-といふ者の/枕草子 138

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

女性に対する古風な尊称。現代でも旧家の女性に対して使われる。古代の后妃(こうひ)の称号の一つである夫人(ぶにん)も和訓はオホトジである。戸主=トヌシの約かともいうが不詳。7~8世紀の石碑・墓誌に豪族層女性の尊称としてみえ、『万葉集』にも「妣刀自(ははとじ)」等の例がある。さまざまなレベルの人間集団を統率する女性が原義か。族刀自的なものから家刀自へと推移するが、古代には里刀自や寺刀自もいて、後世のような主婦的存在に限られない。後宮(こうきゅう)の下級女官(にょかん)にも刀自がいた。[義江明子]
『所京子校訂、浅井虎夫著『新訂 女官通解』(1985・講談社学術文庫) ▽義江明子著「「刀自」考」(『日本古代女性史論』所収・2007・吉川弘文館) ▽義江明子著「「刀自」からみた日本古代社会のジェンダー」(『帝京史学』26)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

〙 (「刀自」はあて字) 「とじ(刀自)」の変化したもの。
〘名〙 (「戸主(とぬし)」の意で、「刀自」はあて字。家の内の仕事をつかさどる者をいう)
① 家事をつかさどる婦人。主婦。いえとうじ。
※書紀(720)允恭二年二月「圧乞(いで)、戸母(トジ)、其の蘭(あららき)一茎(ひともと)といふ〈圧乞、此をば異提(いで)と云ふ。戸母、此をば覩自(トジ)と云ふ〉」
② 女性を尊敬または親愛の気持をこめて呼ぶ称。
※山名村碑‐辛巳歳(681)集月三日「佐野三家定賜健守命孫黒売刀自
③ 年老いた女。老婦人。
※十巻本和名抄(934頃)一「負 劉向列女伝云古語謂老母負也〈今案和名度之 俗用刀自二字者訛〉」
④ 平安時代以降、宮中の御厨子所(みずしどころ)・台盤所(だいばんどころ)・内侍所(ないしどころ)などで、雑役を勤めた女官。
※枕(10C終)一三八「使にいきける鬼童(おにわらは)は、台盤所のとじといふ者のもとなりけるを」
⑤ 貴人の家に仕えて雑役などをする婦人。
※栄花(1028‐92頃)若ばえ「宮々の刀自・をさめにてもこの御子をだに生みたらば」

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世界大百科事典内の刀自の言及

【杜氏】より

…また,酒造労務者の総称ともされる。杜氏の名の由来については,昔中国で初めて酒をつくった杜康(とこう)の名をとったとする説,奈良・平安時代造酒司(さけのつかさ)が酒をつくるのに用いた壺を〈大刀自(おおとじ)〉〈小刀自(ことじ)〉と呼び,後の人が酒をつくる人をも刀自と呼んだとする説,寺社で酒つくりが行われる以前,酒つくりは家庭を取りしきる主婦(刀自)のしごとであり,刀自が転じたものであるとの説などがある。《日本書紀》の崇神紀に〈高橋邑(たかはしのむら)(現,天理市)の人,活日(いくひ)を以て大神の掌酒(さかびと)とす〉とあり,これが記録に残るはじめての杜氏で,奈良県桜井市の大神(おおみわ)神社境内にある活日神社は現在でも杜氏の信仰を集めている。…

※「刀自」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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