江戸時代における雑税の一種。その内容は,(1)商業,漁業,山林業などに従事する者からその売上高,収穫高の何分の1かを徴収するもの,(2)幕府が特定の河川に沿って分一番所を設け,通行荷物から何分の1かの分一銭を徴収するもの,がある。(1)については,江戸時代の田制,税制についての代表的な手引書である《地方凡例録(じかたはんれいろく)》によると,鰯分一,鯨分一,市売分一,請山分一などの例が紹介されている。たとえば鰯分一とは,イワシの漁獲があったときに漁師と魚商人と地元役人が立ち会ってその日の相場を決定し,その収益の何分の1かを分一として徴収するもので,通例は20分の1であったという。鯨分一とは,鯨を捕獲した場合,浦役人が立ち会って近くの村々に入札させ,落札分の何分の1かを徴収した。この場合,鯨の捕獲の状況いかんによって,たとえばもりで突き止めた突鯨と,傷をうけたり死んだりして海岸に漂着した鯨とでは,分一の割合が異なっていた。(2)については,幕府は主要河川に分一番所を設けて分一を徴収した。たとえば三河(愛知県)の豊川では,東上村に番所を設けて川を下る船から分一を,近くの伊那街道を下る荷物からは陸分一を徴収し,また同じ三河の矢作(やはぎ)川では,細川村に分一番所を設けてここでも分一を徴収していた。分一の内容は,東上番所の場合,品目ごとに10分の1から100分の1の6段階に税率を分け,また同一品目でも容量によって差があった。番所で幕府役人がみずから徴収した場合と,有力商人に徴収を請け負わせた場合とがある。
なお分一には,海上交通で船が難破してそれを救助した場合,その報奨として積荷の何分の1かを分一として与える意味も含まれていた。たとえば,船が海難にあって積荷が海上に流れ出したときにこれを拾えばその20分の1,海底に沈んだ積荷を拾い上げれば10分の1といったぐあいに,その率は海難の事情によって異なっていた。
執筆者:吉永 昭
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… 市場運上馬市,肴市,絹市などに課すもので,町数によって異なり,市の繁盛いかんにかかわらず一定額を年ごとに納めた。 小漁運上クジラ,イワシは大漁として分一を課し,そのほかのカツオ,サケ,コイ,フナなどは小漁として運上を課した。 簗(やな)運上川魚を捕る簗に対して課すもの。…
※「分一」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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