再結晶を系統的にくり返して固相と液相との間に新しい分配を成立させ,溶解度差の小さい物質を分離する精製法。ふつう図に示すような方法で,原料物質の溶液をほぼ等量ずつの溶質(ないし液底体)を含む部分に分ける操作をくり返す。図でSは固相,Lは液相を,0,1,2,3,……は分別結晶の各段階における各相を示す。1/2,1/3などの数値は各段階で両相に分配されるべき溶質の割合,太い黒矢印は新たに溶媒を添加,破線矢印は飽和溶液を固相から分離,白矢印は飽和溶液から固相を分離,→は液相を区分することを示す。溶解度の小さい溶質は,白矢印に沿って右方へ,溶解度の大きい溶質は灰色矢印に沿って左方へと運ばれる。この操作を連続的に行えば,固液両相間におけるいわゆる向流分配法を行うことも可能である。このように回を重ねるにしたがい,溶けやすい物質は左の部分に濃縮され,溶けにくい物質は右の部分に濃縮されて,溶解度の差にしたがっていくつかの部分に分けられる。部分の数がある一定数に達した後は,部分の数をふやさないで,も再結晶をくり返して精製を行う。通常の化学的方法で分離しがたい塩類(たとえばアルカリ金属,希土類などの塩)を分離するために利用される。この方法は,イオン交換などのようなクロマトグラフィーと似た操作に比べて,操作を多数回くり返す点ではなはだ手数がかかるが,大量の物質を処理できる点で有利な精製法といえよう。難溶性塩の生成を利用する分別結晶の操作はとくに〈分別沈殿〉とよぶ。そのほか,固溶体とその融成物との間における固液両相の分配の差異を利用して,これに同じ方法を適用する分別結晶も行われる。
→再結晶 →分留
執筆者:藤本 昌利
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溶解度がわずかに異なる溶質を段階的に結晶化して分離する方法。混合溶液から最初に析出する結晶は、より難溶性の成分が相対的に濃縮され、母液にはより易溶性の成分が相対的に濃縮される原理による。時間と手間のかかる操作のため、他の分離法が発達した現在ではあまり利用されないが、歴史的にはプロメチウムを除くすべてのランタノイドがこの方法で分離されている。
多成分系混合溶液の温度・圧力の変化に応じて平衡定数が変化し、溶解度が小さくなった物質から順次結晶化が進行する過程をいうこともあり、マグマから岩石が生成する過程がこれに相当する。
[岩本振武]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この場合,マグマから晶出した結晶がマグマと化学反応を起こすと,その反応の程度や時期によって,結晶の組成もマグマの組成もいろいろに変化する。これを分別結晶作用fractional crystallizationと呼んでいる。ボーエンは,マグマというものは結晶作用の際に結晶と液との間に種々の反応関係を示す反応系であると考え,晶出する結晶と残液との間に種々の程度に分別が起こり,そのために反応の進行の程度に違いを生じ,このことがマグマの分化作用の最も本質的に重要な原因であると主張して,これを反応原理と呼んだ。…
※「分別結晶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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