57番元素ランタンから71番元素ルテチウムまでの15元素の総称。ランタニドともいう。
いずれも原鉱石から分離するときは、古くは分別結晶などを多数回繰り返すことが必要で、イオン交換樹脂による方法が開発されるまでは多くの手間がかけられた。これは最外殻の原子価電子の配列がほとんど同じで、しかもイオン半径がほぼ同じであることによる。すなわち、原子番号の順に並べたときの核外電子の増え方は、最外殻のP殻は変わらず、O殻もほとんど一定で、さらに内側のN殻にある4f軌道で順次電子数が増えている。このため、原子全体の大きさはあまり変わらず、原子核の電荷が一単位ずつ増えることによって、イオン半径は少しずつ減少していく。このことは周期表で同じ族のすぐ下にあるアクチノイドでもみられる。この結果、ランタノイドのあとにくるハフニウム、タンタルなどは他の族の場合と違って、前の周期のジルコニウム、ニオブとそれぞれほぼ同じイオン半径をもつことになり、それぞれの間の分離が困難であることで知られている。このようなランタノイドおよびアクチノイドの系列中でみられるイオン半径の減少を、ランタニド収縮およびアクチニド収縮とよんでいる。
たとえば、ランタノイドの三価イオンのイオン半径はタングステンでは前の周期の同族元素とほとんど同じ半径をとることになり、 のようになる。
のようであって、このためランタノイドのあとにくるハフニウム、タンタル、[中原勝儼]
『F・A・コットン、G・ウィルキンソン著、中原勝儼訳『無機化学』下巻(1988・培風館)』▽『D・M・P・ミンゴス著、久司佳彦訳『無機化学 基礎の基礎』(1996・化学同人)』▽『斎藤太郎著、梅沢喜夫・大野公一・竹内敬人編『無機化学』(1996・岩波書店)』
希土類元素のうち,原子番号57番のランタンLaから,71番のルテチウムLuまでの15元素の総称。〈オイド〉とは〈似たもの〉の意であるから,ランタンを除いた残りの14元素を〈ランタンに似たもの〉という意味でこう呼ぶ学者もあるが,ランタン自身をその中に含めるのが普通である。また,ランタンを除いた14元素をランタニドlanthanideと呼ぶこともある。原子は一般にキセノンと同じ構造の芯の外側に2個の6s電子をもち,その内側の4f軌道(電子の定員14個)が電子によってつぎつぎに占有されていく構造で,最外部の電子配列は4fn5s25p66s2となる。ただしランタンとガドリニウムGdでは4f軌道に入るべき電子の1個がエネルギーの近い5d軌道に移り,4fn5s25p65d16s2(La:n=0,Gd:n=7)のような配列となり,また最後のルテチウムでは4f軌道が電子で満員になるので,1個の電子が5d軌道にはみ出してやはり同様の配列(n=14)になる。これら少数の例外はあるが,ランタノイドが化合物となるときはほとんどつねに3価のイオンの化合物となり,このとき6s,5d,4fの順に3個の電子が失われるので,生じるイオン(Ln3⁺と略記される)の最外部の電子配列は4fn5s25p6(n=0~14)のようにきわめて簡単で,規則的になる。これらのイオンの化合物は互いによく似ているが,イオンの半径が原子番号(核の電荷)の増加とともに著しく収縮していくので(ランタニド収縮),それによる種々の効果が化合物の諸性質にあらわれる。その他の性質・用途などは〈希土類元素〉の項を参照されたい。
執筆者:曽根 興三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
原子番号57の元素ランタンLaから71の元素ルテチウムLuまでの15元素の総称.従来,ランタニドにLaを含む場合と,含まない場合があって紛らわしかったので,IUPAC 1970年命名法規則では,Laを含めてランタノイド(lanthanoids)とよぶように統一されたが,1990年規則では,La~Luに対してふたたびランタニドをランタノイドとともに使用してもよいことになった.最新の2005年規則では,語尾-ideは陰イオンを示唆するのでランタノイドを使用すべきであるとなっている.2000年版日本化学会命名法では,ランタニドを使ってもよいとなっているが,2008年版周期表ではランタノイドが使用されている.しかし,再三の変更のため,ランタニド(lanthanide)はいまだに散見される.[別用語参照]希土類元素
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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