地主がその所有地を,一定期間,小作農に貸して小作料を徴収する小作制度の一種で,小作料の額があらかじめ定められておらず,収穫物の一定の割合を地主が徴収する制度を分益小作という。その割合が収穫物の半分である場合には折半小作と呼ばれるが,その割合が半分ではない場合もかなりあるので,それらを総称して分益小作という。分益小作が行われるのは,小作農が貧困で確実な小作料支払能力をもたないために,あらかじめ定額の小作料を設定できないからであり,地主が種子や役畜の一部を提供する場合もかなりみられる。したがって,この小作制度は,農業生産力の低い近世初めや,貧困な後進地域などに多くみられ,農業の近代化とともに消滅する場合が多い。16~19世紀のフランスの分益小作(メテイヤージュmétayage)や,イタリアのそれ(メッザドリーアmezzadria)などが代表的なものであり,アメリカ合衆国のシェア・クロッピングshare-cropping(シェア・クロッパー)や日本の刈分(かりわけ)小作などもこれに属する。
執筆者:遅塚 忠躬
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小作農が地主に小作料として,収穫物の一定割合を現物で納める小作制度。古代から現代まで世界各地に広く見られるが,小作慣行には大きなばらつきがある。16~18世紀フランスのメテヤージュ(métayage)では,地主が役畜や種子の一部を提供し,収穫物の約半分を地代として徴収した。19~20世紀のベンガルのバルガ(barga)制では,地主が何も提供せずに収穫物の半分を地代として取るのが一般的だった。分益小作は小農民同士の間で行われることがあり,この場合は,地主と小作人の間に搾取・被搾取の関係があるとは必ずしもいえず,双方に利益がある互酬的な関係と捉えるべきケースも多い。折半小作とか刈分小作とも呼ばれるが,割合は半分とは限らないし,作物を地主と小作人が田畑で直接刈り分けるとも限らない。
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…16世紀には商工業や金融業で産をなした都市のブルジョア(町人)が安全な投資先を求めて大量に農地を購入してこれを小作せしめ,また領主自身も直領地を拡大してこれを小作せしめるようになったから,こうしたブルジョアの地主化と領主自身の地主化とによって,小作制度は急速に進展した。16,17世紀のフランスでは,地主はその大土地所有をいくつかに区分して小規模な小作農民に小作させるのが通例で,小作料徴収の形態としては,一定額の貨幣または一定量の生産物を徴収する場合と,収穫物を一定の割合(主として折半)で地主と小作人とで分け合う場合とがあり,前者は定額小作fermage,後者は分益小作métayageと呼ばれる。小作契約期間は3年ないし9年であったが,18世紀には9年契約が増加した。…
…アメリカで南北戦争後,南部のプランテーション大土地所有制が解体されたあとに形成されていった一種の分益小作農。解放後なんらの生活手段を持たない解放黒人と,奴隷解放によってそれまでの労働力をまったく失ってしまったプランターの双方の利害の模索のなかから,地主側が住居や耕地,種子,農具,家畜などの農耕必需品をクロッパーに提供し,クロッパー側はその代償として,彼自身と家族の労働力で耕作を引き受け,収穫の1/3から2/3近くを地主に支払う分益小作制が形成されていった。…
…小作制度の一種で,地主と小作農民とが収穫物を半々に分け合うところからこの名が生じた。小作制度においては,地主が小作農民から小作料を徴収するが,その徴収の仕方を大別すれば,一定額の貨幣または一定量の生産物を徴収する定額小作と,収穫物の一定の割合を徴収する分益小作とに区分され,分益小作のうちで,収穫物の半分を地主が徴収する場合をとくに折半小作という。折半小作が行われるのは,小作農民が貧しくて小作料支払能力が不安定である場合が多く,地主は,あらかじめ小作農民に必要な種子の半分や家畜の半分を貸し付け,収穫後に,生産された農産物(家畜の増加分を含む)の半分を徴収することによって,小作料を確保するのである。…
…イランにおける地主・小作関係をいう。農地改革(1962)前のイランでは耕地の約90%は地主が所有し,うち80%強は分益小作制によって経営されていた。分益小作制は高原地方に広くみられ,降水量が少なく灌漑技術が農作業においてきわめて重要な意味をもつ地方では,ボネboneなどと称する特殊な耕地制度がとられていた。…
※「分益小作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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