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前借金 ぜんしゃくきん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

前借金
ぜんしゃくきん

将来の労務の提供の対価で弁済する約定のもとに,使用者 (雇い主) から労働者に貸付けられる金銭。このような使用者の前貸し金債権と,のちの賃金相殺を許すと労働者に不当な労働を強いるおそれがあるので,労働基準法はこのような相殺を禁じる (17条,罰則 119条) 。なお,使用者と労働者の相殺契約による相殺も,脱法行為として許さないとするのが通説である。前借金は労務者などと雇い主の労働契約の場合にもみられなくはないが,芸娼妓契約や酌婦契約,売春稼業契約などに伴うことが多い。このような場合の前借金は稼業契約を強制する作用をもっており,両者は一体性をもつので,稼業契約が公序良俗違反となる場合 (民法 90) は前借金契約も無効であって,しかも貸し主 (雇い主) は民法 708条によりその返還請求もできない。なお売春防止法は売春をさせる目的の前貸しを禁じている (9条) 。

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デジタル大辞泉の解説

ぜんしゃく‐きん【前借金】

まえがりをした金銭。
雇用契約を結ぶとき、返済することを約束して雇い主から借りる金銭。

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世界大百科事典 第2版の解説

ぜんしゃくきん【前借金】

雇用契約に際し,雇用契約期間終了後に支払われる賃金から自動的に引き落とすことを条件に,契約者に一定の金額が前貸しされる制度,およびその金銭のこと,〈まえがりきん〉ともいう。第2次大戦前の日本において,紡績製糸(生糸)・織物等の繊維産業女工鉱山土建漁業等における筋肉労働者等,広い産業分野にわたってみられた。その基本的目的は,労働者を前貸資金による〈債務奴隷〉的な立場に置くことによって,雇主のもとに拘束的に隷属させ,労働強制を効果的に実現することにある。

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大辞林 第三版の解説

ぜんしゃくきん【前借金】

まえがりした金銭。
雇用契約のときに、雇い主が貸す、まとまった金銭。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

前借金
ぜんしゃくきん

将来得る予定の賃金から差し引くことを条件として、労働契約締結時に使用者が労働者またはその親などに前貸しする金銭のことをいう。この制度は、労働者の窮迫状態に乗じて彼らを長期間債務奴隷的な立場に置き、低賃金と低劣な労働条件で労働を強制するために利用された。第二次世界大戦前のわが国においては、芸娼妓(げいしょうぎ)をはじめとして、繊維産業の女工、鉱山・建築等の肉体労働者など、広い産業分野において普及し、これによって事実上の強制労働と人身売買行為が行われてきた。
 戦後、このような人権侵害を排除・予防するために、労働基準法第17条は、「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」として、前借金の労働による相殺を禁止した。なお、この条項は、労働することを条件とする前貸し債権を問題としているのであるから、使用者から労働者が信用貸しを受けること自体は、これに該当しない。[湯浅良雄]

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