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飯場制度 はんばせいど

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

飯場制度
はんばせいど

土木建設の工事現場付近に労務者を合宿させ,なかば強制的に就労させる前近代的労務制度。労務者の合宿舎として建てられた簡単な建物を飯場と称するところからこの名がある。この制度のもとでは,工事請負業者が組頭を配下において労務者の監督にあたらせ,賃金の中間搾取などを行うことが多く,また賃金支払いも,労務者の逃亡を防ぐため金券が用いられることもあった。労働基準法の施行,大手建設業者のウエイトの増大などにより,ほとんど解体したといってよい。 (→納屋制度 )

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デジタル大辞泉の解説

はんば‐せいど【飯場制度】

明治・大正期の鉱山や土木工事現場における労務管理制度。労働者を飯場とよばれる宿舎に住まわせ、飯場頭による厳しい生活管理、過酷な労働の強制などが行われた。納屋(なや)制度。

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百科事典マイペディアの解説

飯場制度【はんばせいど】

土木・建設業等で労働者を工事現場近くの宿舎(飯場)に収容して労働させる制度。明治初期以来多くみられたが,労働者の日常的生活までが業者によってまかなわれるため身分的拘束,半強制的な労働が生じやすい。

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世界大百科事典 第2版の解説

はんばせいど【飯場制度】

〈飯場〉は労働者の合宿所を意味する言葉であるが,〈飯場制度〉とは飯場頭を中心とする労働請負制度であり,土建業で最も一般的である。かつては鉱山業,林業,その他でも広く見いだすことができた。九州の炭鉱等で納屋,沖仲仕では権造部屋と呼ばれたものは,細部で若干の差異はあっても,本質的には同性質のものである。機能は大きく分けて労働力募集,作業監督,生活管理の三つが含まれ,事業主が労働面には直接タッチすることなく,一定の契約ですべてを飯場頭に一任する。

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大辞林 第三版の解説

はんばせいど【飯場制度】

明治以降に鉱山・土木・建設事業などで行われた労務管理制度の一。労働者を飯場に収容して厳重な監視のもとに仕事をさせ、その賃金の上前をはねるなどの前近代的制度。納屋制度。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

飯場制度
はんばせいど

主として金属鉱山で飯場頭役(とうやく)が経営する飯場に配下坑夫を居住させ、作業請負する制度である。近世には、金児(かなこ)が配下坑夫を採鉱に従事させ、山小屋と呼ばれる簡易住居に居住させた。それが近代に受け継がれて飯場制度となり、さらに土木建築工事現場にも拡がった。
 鉱業生産の主体になる坑夫や支柱夫は、企業が職能訓練せず、必要な技術を職親が教育訓練する友子(ともこ)制度に依存する体制が手掘採鉱が続く戦前まで採用された。近代鉱山では既存鉱山再開発や新規鉱山開発が進み、必要な熟練労働力の争奪が激化する。その調達と日常管理をし、鉱山主から任命される飯場頭に作業請負が委ねられた。飯場は請負代金を一括して代理受領し、同時に居住に関わる生活物資一切を供給し、立替代金を口銭とともに支払賃金から控除して支払った。
 飯場は坑夫飯場と雑夫飯場に二分される。坑夫飯場は手掘採鉱に従事する坑夫の質・量を確保することが強く求められた。しかし坑夫は流動性が高く、より有利な鉱山へ移動したから、圧制は通用しない。雑夫飯場は坑夫の補助作業者が対象で労働定着率が高いから、人員を最大限確保し、出面(でずら)を高めることで経営を安定化した。
 近代前期には、飯場と友子の共存関係が続いたが、その後組織的採鉱に転換したため飯場の作業請負は崩壊、飯場は日常管理での収奪を強めたため両者の敵対関係が激化した。これと間代(けんだい)(掘進単価査定額)の適正化を求め、1907年(明治40)と1919年(大正8)の足尾銅山争議での大きな焦点となった。争議を契機に飯場制度改革を進め、1920年鉱山の労資懇談制の一翼を担う世話役制度に転換した。飯場には「足尾型」と「日立型」がある。後者は大飯場制を当初からとり、要員募集と労務管理に特化した後期飯場制から出発した。
 なお、納屋制度(なやせいど)は、近代炭鉱前期の単純な採炭と出炭に従事する未熟練労働力を調達、その囲い込みと暴力的収奪が顕著だった。飯場制度の変形とはいえるが両者の違いも大きい。[村上安正]
『労務管理史料編纂会編『日本労務管理年誌』第1編上巻(1962・日本労務管理年誌刊行会) ▽大山敷太郎著『鉱山労働と親方制度』(1964・有斐閣) ▽左合藤三郎編・刊『古河鉱業・使用人一般状況』復刻版(1986・洞叢2) ▽村上安正著『足尾銅山史』(2006・随想舎)』

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世界大百科事典内の飯場制度の言及

【監獄部屋】より

…たこ部屋ともいう。金属鉱山での飯場制度,炭鉱での納屋制度に対して,土建業のものを指す場合と,この3者の総称として批判的価値観を含ませて使う場合とがあるが,総称としては飯場制度の語が一般的である。このような制度は,資本主義発達の初期には,そのころ多数生じた浮浪者や困窮した農民を供給源にして,比較的熟練を要さない分野で広く世界にみられたが,日本の場合は,とくにその改善が遅れ,第2次大戦後もなお存在した。…

※「飯場制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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