副腎性器症候群(読み)ふくじんせいきしょうこうぐん(英語表記)adrenogenital syndrome

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

副腎性器症候群
ふくじんせいきしょうこうぐん
adrenogenital syndrome

副腎性男性化症ともいう。主として女児の男性化が問題となる症候群で,原因は,ほとんどが先天性副腎過形成というまれな遺伝性疾患であるが,副腎腫瘍によることもまれにある。先天性副腎過形成では,酵素異常により胎生期から副腎で過剰の男性ホルモンが産生され,生下時すでに男児では陰茎が肥大し,女児では陰核肥大のため男児と見誤るようになる。女児の男性化は生後も進行し,2~3歳で恥毛が発生し,陰核も陰茎様に肥大し,勃起も起る。身体の発育も早く,幼児期には身長が並みはずれて高い。しかし,その後の発育は止り,結局は正常より低い身長にとどまる。思春期に入っても乳房は発達せず,月経も始らない。副腎腫瘍によるものは腫瘍の摘出で治癒するが,酵素異常によるものにはコーチゾン投与が必要である。

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世界大百科事典 第2版の解説

ふくじんせいきしょうこうぐん【副腎性器症候群 adrenogenital syndrome】

ホルモン産生に必要な副腎皮質酵素のいずれかに先天的な欠損があり,副腎皮質機能亢進による男性化症状,すなわち女性での男性化,男児の性早熟がみられる状態をいう。欠損酵素の種類によりさまざまな症状を呈する。 コルチゾール合成障害がある場合,ネガティブフィードバック機構により脳下垂体からACTHの過剰分泌が起こり,先天性副腎皮質過形成と呼ばれる状態になる。この際アンドロゲン合成酵素に障害がなければ,アンドロゲンの過剰分泌が起こり,著しい男性化症状がみられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

副腎性器症候群
ふくじんせいきしょうこうぐん

副腎皮質の機能が亢進(こうしん)してアンドロゲン(男性ホルモン)を過剰に分泌し、性器に異常をおこす疾患。副腎皮質ホルモンであるコルチゾールやアルドステロンは、コレステロールを母体としていくつかの酵素の作用を受けて生成されるが、これらの酵素のいずれかに先天的な欠乏があると、ホルモンの産生が低下するため、副腎皮質刺激ホルモンやレニンの分泌を促し、その結果、前駆ホルモンの産生増加がみられる。このため副腎皮質が肥大し、また前駆ホルモンの代謝によりできるホルモンの過剰がおこり、いろいろな症状が現れるようになる。副腎性器症候群は、先天的に酵素が欠乏し、とくに副腎アンドロゲンの過剰がみられる。男児の場合は男性化が早期におこる思春期早発症が、女児の場合は出生時陰核肥大、陰唇陰嚢(いんのう)融合(女性仮性半陰陽)がみられ、女児を男児と誤って育てることがある。常染色体劣性遺伝形式をとる。出産前診断に基づいて早期に治療を行えば最終身長も正常となり、女性では妊娠、出産も可能となる。

[高野加寿恵]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

副腎性器症候群(先天性副腎過形成)
ふくじんせいきしょうこうぐん(せんてんせいふくじんかけいせい)
Adrenogenital syndrome (Congenital adrenal hyperplasia)
(内分泌系とビタミンの病気)

どんな病気か

 副腎皮質(ふくじんひしつ)からは、コルチゾールとアルドステロンという生命の維持に必要な2種類のホルモンのほかに、男女を問わず、男性化作用のあるホルモン(アンドロゲン)もわずかに分泌されています。副腎性器症候群は、副腎皮質のはたらきの異常により、コルチゾールやアルドステロンの分泌が低下し、一方、アンドロゲンが過剰に分泌される病気です。

原因は何か

 副腎皮質ステロイドホルモンは、コレステロールからさまざまな酵素の影響を受けて合成されます。

 この酵素が先天的に欠けるとコルチゾールがつくられず、これを刺激しようと下垂体(かすいたい)から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が増え、副腎が大きくなります。これは、体が生命の維持に必要な糖質コルチコイドを何とか作りだそうとする生理的な反応のためです。ACTHの過剰な刺激により、はれて大きくなった副腎からはアンドロゲンの分泌が増えます。

 コルチゾールの合成に関わる酵素は数種類あり、欠ける酵素の種類により病気のタイプが分かれ、症状も少しずつ違っています。いずれも常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)による異常です。日本では、21­水酸化酵素の欠損が最も多く認められます。

症状の現れ方

 男女にかかわりなく発生します。女児の場合は陰核(いんかく)が大きくなり、性器はどちらかというと女性よりも男性的な外見になります。生殖器官(子宮、卵巣、卵管)の構造は正常です。成長するにしたがって男性化が顕著になり、声が太く、顔が毛深くなります。男児の場合は、出生時にはとくに異常はみられませんが、幼少時から陰茎(いんけい)が発育し、陰毛が生えて声が太くなります。男女児とも、早い時期に発育が停止してしまいます。

 また、この病気のなかでも重症のタイプでは、新生児期から副腎不全が発生します。嘔吐、脱水、電解質(酸・塩基など)の異常、不整脈などの症状が現れ、適切な治療をしないと生後数日で死亡してしまいます。

検査と診断

 現在日本では、21­水酸化酵素欠損症を見つけるため、新生児スクリーニング検査を行っています。尿中の副腎皮質ホルモンと、その代謝物質を測定することで、どの酵素が欠けたのか推定することができます。症状の軽い不完全型の場合は、副腎皮質刺激ホルモンの負荷後にこれらを調べることで、ようやく診断できることもあります。

治療の方法

 治療の目的は、不足したコルチゾールやアルドステロンを補い、アンドロゲンの値を正常にもどすことです。下垂体からのACTHが出すぎないように、副腎皮質ステロイド薬(デキサメサゾン、フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンなど)の補充を行います。女児で外性器が男性的なものは1~3歳の間に形成手術を行って、形状の異常を矯正します。

病気に気づいたらどうする

 子どもがこの病気をもつ両親は、副腎皮質ステロイド薬ののみ方と副作用について説明を受けてください。けがや発熱で強いストレスを受けた時は医師に報告し、薬の量を増やしてもらいます。副腎皮質ステロイド薬の服用を突然やめると、急性副腎不全を起こします。なお、家系に副腎性器症候群の遺伝がある人、または副腎性器症候群の子どもをもつ人は、遺伝相談を受けることをすすめます。

崎原 哲

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世界大百科事典内の副腎性器症候群の言及

【先天性代謝異常】より

…(10)転送機構異常 シスチン尿症,尿細管性酸血症など腎再吸収障害と腸管吸収障害がある。(11)その他 副腎性器症候群,甲状腺ホルモン合成障害など。
[発症機序]
 生体の遺伝的形質は遺伝子によってのみ伝えられ,その変化は遺伝子の突然変異によって起こる。…

※「副腎性器症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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