副腎性器症候群 (ふくじんせいきしょうこうぐん)
adrenogenital syndrome
ホルモン産生に必要な副腎皮質酵素のいずれかに先天的な欠損があり,副腎皮質機能亢進による男性化症状,すなわち女性での男性化,男児の性早熟がみられる状態をいう。欠損酵素の種類によりさまざまな症状を呈する。
コルチゾール合成障害がある場合,ネガティブフィードバック機構により脳下垂体からACTHの過剰分泌が起こり,先天性副腎皮質過形成と呼ばれる状態になる。この際アンドロゲン合成酵素に障害がなければ,アンドロゲンの過剰分泌が起こり,著しい男性化症状がみられる。21-ヒドロキシラーゼ欠損症,11β-ヒドロキシラーゼ欠損症,3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症の三つがおもなものである。このうち21-ヒドロキシラーゼ欠損症が最も多く,ナトリウム喪失型と単純男性化型とに分類される。前者はアルドステロン分泌低下を伴い,新生児期より著しい電解質異常がみられ,急性副腎不全に陥りやすい。11β-ヒドロキシラーゼ欠損症は男性化症状とともに高血圧を伴うことが多い。3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症はきわめてまれである。治療は糖質コルチコイドの補充療法により,ACTHを抑制し,副腎アンドロゲンの分泌を抑制することによる。以上の先天性副腎皮質過形成によるもののほかに,後天的なものとして副腎皮質腫瘍が原因のこともある。
執筆者:村上 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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副腎性器症候群
ふくじんせいきしょうこうぐん
副腎皮質の機能が亢進(こうしん)してアンドロゲン(男性ホルモン)を過剰に分泌し、性器に異常をおこす疾患。副腎皮質ホルモンであるコルチゾールやアルドステロンは、コレステロールを母体としていくつかの酵素の作用を受けて生成されるが、これらの酵素のいずれかに先天的な欠乏があると、ホルモンの産生が低下するため、副腎皮質刺激ホルモンやレニンの分泌を促し、その結果、前駆ホルモンの産生増加がみられる。このため副腎皮質が肥大し、また前駆ホルモンの代謝によりできるホルモンの過剰がおこり、いろいろな症状が現れるようになる。副腎性器症候群は、先天的に酵素が欠乏し、とくに副腎アンドロゲンの過剰がみられる。男児の場合は男性化が早期におこる思春期早発症が、女児の場合は出生時陰核肥大、陰唇陰嚢(いんのう)融合(女性仮性半陰陽)がみられ、女児を男児と誤って育てることがある。常染色体潜性遺伝形式をとる。出生前診断に基づいて早期に治療を行えば最終身長も正常となり、女性では妊娠、出産も可能となる。
[高野加寿恵]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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副腎性器症候群
ふくじんせいきしょうこうぐん
adrenogenital syndrome
副腎性男性化症ともいう。主として女児の男性化が問題となる症候群で,原因は,ほとんどが先天性副腎過形成というまれな遺伝性疾患であるが,副腎腫瘍によることもまれにある。先天性副腎過形成では,酵素異常により胎生期から副腎で過剰の男性ホルモンが産生され,生下時すでに男児では陰茎が肥大し,女児では陰核肥大のため男児と見誤るようになる。女児の男性化は生後も進行し,2~3歳で恥毛が発生し,陰核も陰茎様に肥大し,勃起も起る。身体の発育も早く,幼児期には身長が並みはずれて高い。しかし,その後の発育は止り,結局は正常より低い身長にとどまる。思春期に入っても乳房は発達せず,月経も始らない。副腎腫瘍によるものは腫瘍の摘出で治癒するが,酵素異常によるものにはコーチゾンの投与が必要である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の副腎性器症候群の言及
【先天性代謝異常】より
…(10)転送機構異常 シスチン尿症,尿細管性酸血症など腎再吸収障害と腸管吸収障害がある。(11)その他 副腎性器症候群,甲状腺ホルモン合成障害など。
[発症機序]
生体の遺伝的形質は遺伝子によってのみ伝えられ,その変化は遺伝子の突然変異によって起こる。…
※「副腎性器症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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