創造的性格(読み)そうぞうてきせいかく(その他表記)creative personality

最新 心理学事典 「創造的性格」の解説

そうぞうてきせいかく
創造的性格
creative personality

個人はものの見方,考え方,態度興味価値観や各種の能力などにおいて異なっている。個人のもっているそのような特徴の全体像パーソナリティとよばれ,知的な側面と情緒的・意志的な側面に大別される。情緒的・意志的な側面には,その個人の創造的性格も含まれる。1960年代から70年代にかけて,創造的性格に関する多くの調査研究がなされた。その方法は,作品・著作・研究・発明などに関してなんらかの基準を設けてその水準を判断し,創造性が高いと判定された人に絵画統覚テスト,ロールシャッハ・テストなどのパーソナリティ・テストを実施して,性格の特性を探るものであった。トーランスTorrance,E.P.(1962)は多くの研究を通覧して,創造性の高い人がもつ84の特性を挙げている。それらの一部は,①無秩序を受け止める,②冒険的である,③困難な仕事に挑戦する,④勇気がある,⑤優越したいという望みをもつ,⑥決断力がある,⑦精力的である,⑧好奇心に満ちている,⑨自主的な思考をする,⑩粘り強い,⑪一つの問題に夢中になる,⑫込み入った考えを好む,⑬自分の意志で物事を始める,⑭美への感受性をもつ,⑮投機的である,⑯多才である,⑰頑固である,⑱若干無教養で原始的である,⑲細かいことに興味がない,⑳不満がある,などである。

 創造的な人についての研究から得られた創造的性格には,①感性が鋭く自己信頼している,②自分の住む文化の周辺部にいる,③しばしば子どものように振る舞う,④曖昧さに対して寛容である,⑤開放的である,⑥衝動的である,などの特徴がある。少し古くなるが,小・中学校の教師が感じている創造的性格に関する調査がある(河野重雄,1967)。それによると,創造的な児童・生徒には,①自主的である,②自発性がある,③疑問に思ったことはなんでも質問する,④限られた手がかりから上手に推量する,⑤自分の信じていることは勇気をもって主張する,などの性格特徴があるという。

 ファイストFeist,G.J.(2010)は,開放性opennessと創造性の関係を調べる研究を調査して,開放的な人は,想像的でありかつ好奇心に満ちているので,創造的な成果が出せるという。しかし,開放性の高い人であっても,すべての状況で創造的であるのではなく,広くて曖昧な課題を解決するときに,創造的な行動が最大になるという。

 自己効力self-efficacyとは「何かをすることができる」とか「ある行動を引き起こすことができる」というその人の自信を指しており,創造的な人は全般的でないにしても,自分の得意な領域では,絶対的で強力な自己効力をもつという多数の研究がある。保守的な性格と創造性の関係も研究されたが,予想されるように保守性と創造性は逆の関係にあった。

 エジソンが困難な状況を乗り越えて多くの発明をしたり,ゴッホがまったく売れない絵を生涯をかけて描いたり,ポアンカレが寝食を忘れて数学の定理を証明したりしたのは,この創造的性格によるところが大きい。一般に,科学者・発明家・芸術家・文学者・起業家などが創造的な所産や業績を求めつづけるのは,探索することや創り出すことに喜びを感じるこの創造的性格が深く関与しているためと思われる。 →天才
〔弓野 憲一]

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