日本大百科全書(ニッポニカ) 「加水錫石」の意味・わかりやすい解説
加水錫石
かすいすずいし
varlamoffite
酸化鉱物の一つ。ファーラモッフ石、バルラモフ鉱ともいう。1946年デ・ダイカーDe Dyckerによってザイール(現、コンゴ民主共和国)のカリマKalima鉱床から土状で鉄に富んだ錫石の一変種として報告され、そのままで取り扱われてきたが、1993年シドレンコG. A. Sidorenkoらによって、ロシア産のものを中心に再検討された。その結果、鉄の量に限界があり、ティグリノゴイエTigrinogoye鉱床産のものがほぼSn2Fe3+O5(OH)に近く、これを端成分とみなすことが適当という判断が下された。この定義で独立種とみなされているが、2008年時点で、国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物・命名・分類委員会へは提案されていない。日本ではこの定義と一致するものが京都府亀岡市行者(ぎょうじゃ)山から発見されている。錫石は容易に酸化分解されるものではないということから、成因的には黄錫鉱(おうしゃくこう)などスズを含んだ硫化物の分解によって生成されたとする見解がある。正式な和名は決定されていないが、Fe3+が主成分となっていることから、単に錫石の加水産物ではないので、加水錫石という名称はかならずしも適当ではないかもしれない。英名は、最初にこの鉱物を発見したコンゴ(当時ベルギー領)の鉱山技師ファーラモッフNicolas Varlamoff(1910―1976)にちなむ。
[加藤 昭 2016年2月17日]