加部島
かべしま
呼子の北方約五〇〇メートルにある。周囲約一二キロ、面積二・六八平方キロ。島の最高峰天童岳は標高一一二・二メートル。ほぼ全島が台地で、海岸は一部を除き断崖絶壁になっている。
島内の田島神社は「延喜式」に「田嶋坐神社名神大」とある。行基作と伝えられる大日本国正統図に「呼戸」とあるのは加部島に比定できる。古くから大陸渡航の要所で、古墳期の遺跡として瓢塚(六世紀初頭の前方後円墳で、稚武王の墓と伝える)・鉢の底・お手洗・鬼の口・唐干田・二軒茶屋の各古墳が知られる。
田島神社記に、小野篁は、この神の告げにより遣唐副使を中断したとあるが、これは田島神社が遣唐使などの祈願所となっていたことを示すものであろう。「扶桑略記」の延久四年(一〇七二)三月一五日条に「大雲寺阿闍梨成尋於肥前国松浦壁嶋、乗唐人 船曾聚之船」とあり、「成尋阿闍梨母日記」によれば延久三年「三月十九日、つくしの日せんの国まつらのこほりかへしまという所をはなれて、おなし廿三日みむしゆのふくゐ山をみる」とある。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
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加部島
かべしま
佐賀県北西部、唐津市(からつし)に属する島。面積2.68平方キロメートル。壱岐(いき)水道に突き出す東松浦半島の北端呼子(よぶこ)の港外に横たわる。古くは「壁嶋(かべしま)」とあるように、避難港の呼子や名護屋(なごや)浦の防波堤の役割を果たしている。島には農漁業の加部島と、漁業の片島(かたしま)の二つの集落があり、対岸の九州本土呼子とは呼子大橋で結ばれる(1989年架橋)。南端片島の背後に標高112メートルの天童(てんどう)岳、加部島集落背後の中・北部には標高40メートル以下の玄武岩台地が広がる。台地にはアマナツカン、イチゴ、ニンニクなどを栽培し、水田や肉用牛飼育もみられる。漁業はハマチ養殖のほか、イカ、タイ、ウニ、海草類などの水揚げをもつ。とくにイカは「呼子イカ」として知られる。夏越(なごし)祭で知られる田島神社は『延喜式(えんぎしき)』の名社で、海上安全の神として古くから崇敬を集めている。その境内の佐用姫(さよひめ)神社は松浦佐用姫(まつらさよひめ)の哀話を伝え、豊臣(とよとみ)秀吉も名護屋在陣のおりに社領を寄進した。玄海国定公園(げんかいこくていこうえん)の一部で、観光開発も進んでいる。人口516(2012)。
[川崎 茂]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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加部島 (かべしま)
佐賀県北西部,唐津市呼子町にある島。玄海国定公園に属する。面積2.68km2,人口505(2012)。壱岐水道に臨む東松浦半島北端の呼子港,名護屋港の前面に浮かび,〈壁島〉の名のごとくこれらの港の防波堤の役割をなす。南部に天童岳(112m),中・北部には玄武岩台地が広がり,その末端海食崖には玄武岩の柱状節理がみられる。ウニや貝,藻類などの水産のほかに,台地ではタバコ,ニンニク,ジャガイモ,ムギ,アマナツなどを栽培し,稲作や和牛飼育も行われる。田島神社は古くから海上安全の神として崇敬され,名護屋城在陣の豊臣秀吉も朱印状を与えた。島と呼子町殿ノ浦を結ぶ橋が1989年に開通した。
執筆者:川崎 茂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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加部島
かべしま
佐賀県北部,東松浦半島北端にある島。唐津市に属する。玄武岩台地からなり,呼子,名護屋の天然の防波堤となっている。東岸の田島神社は県下最古の神社といわれ,境内に松浦佐用姫が石になったという伝説の望夫石がある。南端の天童岳 (112m) は名護屋湾や玄界灘を一望できる景勝地。呼子とは呼子大橋で結ばれている。玄海国定公園に属する。面積 2.68km2。人口 788 (1996) 。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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加部島
佐賀県唐津市、呼子港の沖約500メートルに位置する島。面積約2.68平方キロメートル。本土とは呼子大橋で結ばれる。島東部の田島(たしま)神社は延喜式内社で、境内には松浦佐用姫の伝説にちなむ佐用姫神社がある。島北端には灯台がある。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の加部島の言及
【田島神社】より
…佐賀県東松浦郡呼子町加部島(かべしま)に鎮座。多紀理毘売(たぎりひめ)命,市杵島比売(いちきしまひめ)命,多岐津比売(たぎつひめ)命を主神とし,大山祇(おおやまつみ)命,稚武(わかたけ)王を配祀する。…
※「加部島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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