東松浦半島(読み)ひがしまつうらはんとう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「東松浦半島」の意味・わかりやすい解説

東松浦半島
ひがしまつうらはんとう

九州北部、壱岐水道(いきすいどう)(玄界灘(げんかいなだ))に突き出した、佐賀県北西部の半島。北西突端の値賀崎(ちかざき)に玄海原子力発電所がある。東に唐津湾(からつわん)を抱き、西には伊万里湾(いまりわん)が深く入り込む。半島南部の野高(のだか)山(260メートル)付近を除けばだいたい標高200メートル以下で、玄武岩の丘陵性台地をなす。俗に上場台地(うわばだいち)と称し、従来水利に恵まれず、果樹のほか、いも類、葉タバコなどの畑作が目だったが、土地改良事業が進む。海岸は多くの入り江や岬、小半島の入り組むリアス海岸で、漁港やタイ、真珠などの養殖場が立地する。古くは中世松浦党(まつらとう)の根拠地として知られた。沖に馬渡島(まだらしま)、加唐島(かからじま)ほか玄武岩の島々が浮かび、海岸一帯は玄海国定公園対馬(つしま)暖流の洗う温和な風土をなし、高串(たかくし)アコウ自生北限地帯は、海食洞の七ツ釜(ななつがま)とともに国指定天然記念物。朝鮮半島に近く、特別史跡名護屋城(なごやじょう)跡などがある。国道204号が通じ、唐津東港―壱岐(印通寺(いんどうじ))港間にフェリーボートが通う。

[川崎 茂]


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改訂新版 世界大百科事典 「東松浦半島」の意味・わかりやすい解説

東松浦半島 (ひがしまつうらはんとう)

佐賀県北西部の半島。壱岐水道に突き出し,東に唐津湾,西に伊万里湾が入り込む。一般に上場(うわば)台地とよばれる,標高200m以下の玄武岩の丘陵性台地が広がり,台地末端の臨海部はリアス海岸をなす。従来,台地は水利に恵まれず,いも類,タバコなどの畑作や,ミカンなどの果樹栽培が行われてきた。水資源対策や土地改良事業が進められている。臨海部の浦々には,漁港やタイ,真珠などの養殖場が点在し,玄海町の値賀(ちか)崎には九州唯一の原子力発電所,玄海原子力発電所が立地する。馬渡(まだら)島など沖合の島々や海岸一帯は景勝地,史跡,伝承などに富み,玄海国定公園の一画をなす。玄武岩の海食洞で知られる唐津市の七ッ釜や高串アコウ自生北限地帯は国指定の天然記念物。半島北端は,壱岐,対馬を経て朝鮮半島に至る最短コースにあり,豊臣秀吉も朝鮮出兵の前線基地とした。その名護屋(なごや)城跡ならびに陣跡は国指定の特別史跡。呼子(よぶこ)(2008年現在は唐津)から壱岐の印通寺(いんどうじ)にフェリーが通う。また,臨海部を国道204号線が通じる。
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百科事典マイペディア 「東松浦半島」の意味・わかりやすい解説

東松浦半島【ひがしまつうらはんとう】

佐賀県北西部の半島。壱岐水道を隔てて壱岐と対する。海岸は出入に富み,唐津,呼子,名護屋などは良港で玄海漁業基地。上場(うわば)と呼ばれる台地上ではタバコ,ユリ,ニンニクなどを栽培。海岸は玄海国定公園に属する。
→関連項目壱岐水道佐賀[県]鎮西[町]肥前[町]呼子[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「東松浦半島」の意味・わかりやすい解説

東松浦半島
ひがしまつうらはんとう

佐賀県北西部,玄界灘に突出した半島。古くから壱岐,対馬を経て大陸との交通が盛んであった。海岸は出入りに富むリアス海岸で,呼子港,名護屋港,唐津港などの良港があり,いずれも漁業基地となっている。半島は玄武岩からなる台地で,上場台地と呼ばれ,野菜,タバコ,ミカンなどの栽培,肉牛,乳牛の飼育が行なわれる。国の特別史跡の名護屋城跡および陣跡,国の天然記念物である屋形石の七ツ釜,立神岩など景勝地が多く,玄海国定公園に属する。

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世界大百科事典(旧版)内の東松浦半島の言及

【佐賀[県]】より

肥前国【狐塚 裕子】
[辺境性と先進性]
 県都佐賀市から東京までの鉄道距離は約1230kmにも及び,歴史的にも畿内,関東などの国の支配中心からみれば西の辺境に位置した。一方,県内の東松浦半島北端から壱岐,対馬を経て朝鮮半島南端の釜山に至る直線距離は200km程度で,朝鮮半島や中国大陸に近接した位置にあり,また長崎の出島にも近く,古くから外来文化との交渉は活発であり,その受容の面でも先進性を示してきた。たとえば,朝鮮式山城の基肄(きい)城や帯隈山神籠石(おぶくまやまこうごいし),おつぼ山神籠石などは,対外的な国土防衛の軍事施設とみられるし,中世の松浦(まつら)党はモンゴル襲来のとき,その防衛にあたっている。…

※「東松浦半島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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