勤労者財産形成促進制度(読み)きんろうしゃざいさんけいせいそくしんせいど

日本大百科全書(ニッポニカ) 「勤労者財産形成促進制度」の意味・わかりやすい解説

勤労者財産形成促進制度
きんろうしゃざいさんけいせいそくしんせいど

労働者財産形成制度ともいう。通称財形制度貯蓄や持ち家取得など労働者の財産形成を国家や企業の援助を通して奨励・促進する制度。日本では勤労者財産形成促進法(昭和46年法律第92号)に基づき1972年(昭和47)1月発足し、数次の改変を経て今日に至っている。制度は、(1)勤労者財産形成(以下、財形と略す)貯蓄制度、財形住宅貯蓄制度および財形貯蓄年金制度(事業主による賃金控除・払込み代行、年金のみ利子非課税)、(2)財形給付金制度および財形基金制度(事業主の全額拠出に基づく給付金の支給)、(3)財形助成金制度(中小企業対象)、(4)財形融資制度(持ち家分譲融資、持ち家個人融資、進学融資および集積された資金の還元融資)からなる。日本がモデルとした1961年発足の西ドイツの制度に比べても、国や事業主の支援が少なく、労働者の自助努力が中心になっており、大衆資金動員の手段になっている点に批判があり、また企業内福利厚生との癒着も問題視されている。2011年(平成23)10月1日以降、独立行政法人勤労者退職金共済機構の管轄下に置かれている。

浪江 巖・伊藤健市]

『労務研究所編・刊『財形貯蓄と持ち家制度』(1977)』『労働省労働基準局賃金福祉部福祉課編『勤労者の財産形成』(1981・日本労働協会)』『労働省労働基準局賃金福祉部編『財形制度――勤労者財産形成制度の理論と実務』(1997・財形福祉協会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勤労者財産形成促進制度」の意味・わかりやすい解説

勤労者財産形成促進制度
きんろうしゃざいさんけいせいそくしんせいど

国と事業主が勤労者の財産形成と生活安定の促進を援助する制度。財形制度などと略す。ドイツ連邦共和国(西ドイツ)などヨーロッパで行なわれていた制度が日本に移入され,1971年に成立した勤労者財産形成促進法に基づいて施行されている。財形貯蓄制度(給料からの天引きによる積み立て貯蓄),財形給付金制度・財形基金制度(事業主の金銭拠出による援助),財形融資制度(財形持家融資制度,財形教育融資制度。持ち家取得促進〈→持ち家制度〉や教育のための融資),に大別される。制度の中核である財形貯蓄制度は一般財形貯蓄,財形年金貯蓄,財形住宅貯蓄の 3種類からなり,財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は元本合計 550万円(財形年金貯蓄のみで保険等の商品の場合は保険料 385万円)までは利子等が非課税である。制度に基づき,民間金融機関は財産形成信託,財産形成年金信託,財産形成住宅信託などの商品を扱っている。事業主は制度を通じて福利厚生(→企業内福利厚生)の充実をはかることができ,勤労者は貯蓄が公的年金に加わることで老後生活の基盤づくりができるほか,公的融資が利用できる利点もある。また,ほかの金融商品への預け替え制度,財形制度がない中小企業に転職した場合の特例自己積立制度などもある。制度発足当初は雇用促進事業団が,2004年からは雇用・能力開発機構が,2011年からは勤労者退職金共済機構が事業を運営する。(→勤労者財産形成政策

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人材マネジメント用語集 「勤労者財産形成促進制度」の解説

勤労者財産形成促進制度

・財形制度とも呼ばれる、労働者に計画的な貯蓄を支援し、生活の安定を図ることを目的とした仕組み。企業によっては利子補填等を図る場合もあり、一般的な貯蓄より高い利子率で貯蓄できるメリットもある。
・当該制度は、(一般)財形貯蓄制度、財形年金貯蓄制度、財形住宅貯蓄制度、財形給付金制度、財形基金制度、財形助成金制度、財形貯蓄活用給付金・助成金制度、財形持家転貸雄融資制度、財形持家分譲融資制度、財形共同社宅用住宅融資制度、財形教育融資制度等で構成されている。

出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報

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