勘籍(読み)かんじゃく

精選版 日本国語大辞典 「勘籍」の意味・読み・例文・類語

かん‐じゃく【勘籍】

  1. 〘 名詞 〙 令制で、民部省に保管された戸籍を検査し、身分を確認すること。僧侶位子雑色諸衛などは徭役(ようえき)を免除されるので確認する必要があった。
    1. [初出の実例]「上件二人勘籍者、今録宣旨告知、不怠宣語旨者」(出典正倉院文書‐天平一六年(744)一二月二九日・山田君室等勘籍)

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改訂新版 世界大百科事典 「勘籍」の意味・わかりやすい解説

勘籍 (かんじゃく)

律令国家への租税負担の減免にあたって,6年ごとにつくられた戸籍の数回分を照合・調査して,本人の身元を確認する作業。そのケースには,律令制支配機構にはじめて参加する場合,俗界を離れて官僧つまり正式の国家の僧侶になる場合,また犯罪者が徒罪(ずざい)以上の刑罰をうける場合などがある。この手続は,官人制機構や官僧の世界にはいりうる資格としての身元を認定し,またその負担の減免を確定するとともに,負担の徴収が不可能になる徒罪以上の身元確認を意味した。勘籍は,おそらく飛鳥浄御原令(あすかきよみはらりよう)(689施行)で成立し,その3回,5回の戸籍を照合する方式が具体的に確立したのは,和銅~養老年間(708-724)ごろであろう。この手続による負担の減免は,やがて合法的な負担忌避の一手段として利用され,律令制支配の弛緩後退によって,勘籍はしだいに機能を喪失し,10世紀中葉以降になると,実質的に崩壊した。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「勘籍」の解説

勘籍
かんじゃく

戸籍を確認調査すること。とくに律令制下,課役負担を免除する際に,現在から数回前の戸籍にさかのぼって記載の確認を行うこと。律令制の支配機構に下級官人としてはじめて加わるとき(出身),律令国家の官僧になるとき(得度(とくど)),罪人が徒罪(ずざい)以上の刑罰をうけたときなどに勘籍が行われた。ふつう五比(造籍5回分)の籍が調査されたが,得度者は三比とされるなど場合によって異なり,時代によって変化する例もある。正倉院奈良時代の勘籍文書の実物が残る。

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