雑色(読み)ぞうしき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

雑色
ぞうしき

(1) 令制において,品部 (ともべ) ,雑戸 (ざっこ) と併称される官制の下部組織。中央官司で手工業に従事したり,郷土での生産にたずさわった。 (2) 院,御所官衙公家などに奉仕して雑役に従ったもの。 (3) 蔵人所下級官人。定員8名,公家の子弟などが任じられた。 (4) 鎌倉室町幕府の職名。鎌倉幕府では侍所に属した最下級役人。室町幕府では触状の使者などをつとめた。 (5) 近世には,四座雑色と称し,五十嵐松村松尾荻野の4氏 (上雑) が分掌して京都所司代に属し,京都の行政,警察,司法の業務を補佐した半官半的な役人組織。上雑色の下に下雑色,見座,中座,穢多,非人が属した。

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デジタル大辞泉の解説

ざっ‐しき【雑色】

ざっしょく(雑色)」に同じ。
ぞうしき(雑色)」に同じ。
「院宣をば文袋に入れて、―が頸(くび)にぞかけさせたりける」〈平家・八〉

ざっ‐しょく【雑色】

いろいろな色がまじった色。また、さまざまな色。
ぞうしき(雑色)

ぞう‐しき〔ザフ‐〕【雑色】

律令制における品部(しなべ)雑戸(ざっこ)総称
蔵人所(くろうどどころ)の下級職員。公卿の子弟などが任じられた。
院の御所摂関家などで、雑務に従事した無位の役人。
鎌倉・室町幕府の雑役に当たった下級役人。小舎人(こどねり)走衆(はしりしゅう)の類。

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百科事典マイペディアの解説

雑色【ぞうしき】

下級役人。本来は律令制官僚集団の下部組織をなした雑多な職種の総称。下級の技術者も含むが,一般には雑役,走使いを勤めた。鎌倉幕府成立当初は源頼朝の身辺に仕える要職であったが,のち活動分野が狭められ,雑事に当たった。→四座雑色
→関連項目文正草子

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世界大百科事典 第2版の解説

ぞうしき【雑色】

雑色とは本来,種別の多いことおよび正系以外の脇役にあるものを意味し,形容詞としても使われたが,そうした傍系にある一群の人々,すなわち雑色人も雑色とよばれた。古代には四等官の正規の官人に対する準官人,農耕本業とする思想によって末業の工芸民,諸司に分属して専門技術に従う伴部や使部など,その場所と立場に応じて異なった内容をもっている。古くは公民の最下部に属して賤民に近い品部(しなべ)・雑戸(ざつこ)を指す階級身分の語と解するが行われたが,それは正確ではなく,書算など才技のある白丁(はくてい)が官人に出身する一つの経路でもあった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

雑色
ぞうしき

古代の律令(りつりょう)制に始まる用語で、中世より近世まで用いられたが、いずれも下級の諸種の身分と職掌を表す。

 古代では、「諸司雑色人」といって、朝廷の官人や有位者の下にあって、雑使に従う使部(しぶ/つかいのよぼろ)、宮廷の諸門の守衛、殿舎の清掃・管理・修理、乗輿(じょうよ)の調進、供御(くご)の食物の調理、水氷の供進などにあたる伴部(ばんぶ/とものみやつこ)などの職種があった。それより身分が低く、宮廷工房で生産にあたる品部(しなべ)・雑戸(ざっこ)も雑色に含める解釈もあり、各官司で、写書、造紙、造筆、造墨、彩色、音楽などに従う諸生・諸手もそうよばれた。また造寺司のもとの各所の下級官人や、仏工、画師、鋳工、鉄工、木工、瓦(かわら)工などの工人も、このうちに含まれる。これらは、一般の農民=白丁(はくてい)とは区別され、属吏としての身分をもち、また官位を有するものもあり、課役を免除される点に特色がある。

 その後、雑色の概念は拡大され、「諸国雑色人」といって、国衙(こくが)や郡家で、上記に準じた身分のもの、「諸家雑色人」として貴族の家務に従う従者にも適用され、また蔵人所(くろうどどころ)をはじめ政府の諸所が成立すると、蔵人所雑色のような特殊なものも現れる。

 中世に入って、武家の従者が雑色とよばれるのは、おもに「諸家雑色人」の系譜を継ぐもので、幕府の番衆の下級役人から、一門以外の従者に及ぶまで用いられた。

[平野邦雄]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ざっ‐しき【雑色】

〘名〙
① 貴顕の家や官司などに仕えて、雑役を勤めた卑賤の者の称。ぞうしき。
※平家(13C前)八「院宣をば文袋に入れて、雑色(ザツシキ)〈高良本ルビ〉が頸(くび)にぞかけさせたりける」

ざっ‐しょく【雑色】

〘名〙
① いろいろまじった色。また、さまざまな色。ざっしき。ぞうしき。〔改正増補和訳英辞書(1869)〕

ぞう‐しき ザフ‥【雑色】

〘名〙
① 「ぞうしきにん(雑色人)①」の略。
※令義解(718)選叙「凡帳内資人等本主亡者。〈略〉其雑色任用者。考満之日。聴内位
※落窪(10C後)二「殿に仕うまつる人、さふしき牛飼まで、この少将殿になびき奉らぬなし」
② 「ぞうしきにん(雑色人)②」の略。
※続日本紀‐神亀五年(728)八月甲午「是日勅始置内匠寮。頭一人〈略〉史生八人、使部已下雑色匠手各有数」
③ 「ぞうしきにん(雑色人)③」の略。
※枕(10C終)五三「さふしき随身はすこしやせてほそやかなるぞよき」
④ 平安時代以後、公家・武家の家の従者。雑役をつとめる。
※今昔(1120頃か)一三「正家〈略〉、雑色に仕ひける男有けり」
※随筆・貞丈雑記(1784頃)四「武家に雑色と申は中間より下り馬屋の者より上り也。公家には中間を雑色と被仰候」
⑤ 中世、鎌倉・室町幕府、守護所などで、雑役をつとめた下級の職員。
※吾妻鏡‐治承四年(1180)一二月二八日「朝夕候雑色数」
※太平記(14C後)九「我は六波羅殿の御雑色(ザウシキ)に、六郎太郎と云ふ者にて候へば」
⑥ いろいろの色。白以外の色の総称。
※文華秀麗集(818)下・舞蝶〈嵯峨天皇〉「数群胡蝶飛乱空 雑色紛紛花樹中」
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)二「七宝の雑色(しちほうのサウシキ)(〈注〉ななつのたからのマシワレルイロ)の樹には、つねに華菓実あらん」

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旺文社日本史事典 三訂版の解説

雑色
ぞうしき

古代以来,雑事などにたずさわった人びと
①古代の諸官庁に隷属していた最下級の役人。宮廷工房の手工業に従事した。
②院・御所・摂関家で雑役に従事した下級の役人。
③蔵人所 (くろうどどころ) に置かれた下級の職名。
④鎌倉・室町時代,諸家に仕えて雑役に従事した足軽・従者などのこと。

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世界大百科事典内の雑色の言及

【蔵人所】より

…供御物貢進の体制は,その後11世紀後半以降再び大きく改革され,中世的な御厨と供御人(くごにん)の体制が成立するが,蔵人所はひきつづき供御人に対する裁判権を掌握し,その本家的な存在として,彼らの活動を保護する一方で,彼らの奉仕による収入を重要な経済基盤とした。
[蔵人所の職員]
 蔵人所には別当,蔵人頭,蔵人,非蔵人,雑色(ぞうしき),所衆,出納,小舎人(こどねり),滝口鷹飼等の職員が置かれた。別当(1名)は蔵人所の総裁である。…

【四座雑色】より

…五十嵐,荻野,松村,松尾の4氏が統括したので四座と称した。四座雑色の起源は室町幕府で京都の検断を行った侍所の小舎人雑色にもとめられるが,江戸幕府による京都支配機構の末端に組み入れられたのは1601年(慶長6)板倉勝重が四座に四方内を分担させて以来のことである。もとは荻野,五十嵐の2氏のみであったが,足利義政のころに松尾,松村の2氏が加えられた。…

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