改訂新版 世界大百科事典 「化学めっき」の意味・わかりやすい解説
化学めっき (かがくめっき)
chemical plating
めっきの主流である電気分解を利用した電気めっきに対して,電気分解によらないめっき加工法を化学めっき,または無電解めっきelectroless platingと呼ぶ。金属塩溶液と還元剤からなる浴に被処理材を浸し,この表面に金属を還元析出させるもので,ニッケル,コバルト,銅,銀などのめっきが行われている。被処理材は金属に限らない点が特色の一つである。ガラスに銀めっきを行って鏡を製造する銀鏡反応は,19世紀初頭から行われてきた化学めっき技術の実例である。プラスチック,紙,陶磁器などにもめっきすることができるが,表面の活性化前処理技術(めっきする前に薬品などにより処理し,めっきがつきやすいようにすること)の成否が密着性を支配する。銅の化学めっきは,プラスチック素材の電気めっき用下地処理として,表面に電導性を与える目的で利用されている。膜厚精度の高い均一なめっきが得られるが,めっき速度が遅いのが欠点である。還元剤としては,ニッケルの化学めっきでは次亜リン酸塩,水素化ホウ素(ボラン)などの化合物が,銅や銀の化学めっきではホルムアルデヒド,ブドウ糖などが用いられる。
執筆者:増子 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報